「事業税申告書」と「道府県民税申告書」は提出先が同じため、1枚にまとめられています。第6号様式という名称が付されていますが、6号様式の左半分が「事業税申告書」、右半分が「道府県民税申告書」になっています。
第1章で説明したように、事業税の課税対象(標準)は法人税の課税対象である「当期の所得金額」に数項目の調整をして求めます。道府県民税の法人税割は、その名が示すように法人税額をもとにして算出し、均等割額を加えます。
法人税申告書をもとにしていますから、それぞれの付属明細書も法人税申告書(別表)に類似したものがあります。
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法人税申告書
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事 業 税 申 告 書
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道 府 県 民 税 申 告 書
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繰越欠損金 |
別表7(1) |
6号様式別表9 |
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事業税に固有のもの |
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6号様式別表5
(事業税の非課税所得がある法人の所得明細) |
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道府県民税に固有のもの
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6号様式別表4の3(都民税の均等割額の明細。ただし都民税のみ。)
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〔1〕
事業税申告書
1.事業税の課税標準
事業税の課税標準(課税対象額)は、法人税の課税標準である「当期の所得金額(別表4「合計」欄の①)」に数項目の調整をして求めます。加算・減算とも3項目ですが、主に次の2点です。
●
加算 ⇒
損金の額に算入した所得税額(法人税申告書別表6(1)で計算済み。ただし、法人税で税額控除せず損金とした場合は所得税額の全額。)
●
減算 ⇒ 繰越欠損金・災害損失金(6号様式別表9)
… 繰越期間は法人税と同一です。
【6号様式別表9】
控 除 前 所 得 金 額
第6号様式(68)
-
(別表10(9)又は(21)) |
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所 除 限 度 額
(左の額の50% 又は 100%)
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事
業 年
度 |
区 分 |
控除未済欠損金額 |
当期控除額 |
翌期繰越額 |
:
|
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/ |
: |
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|
:
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:
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:
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|
:
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|
:
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|
:
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|
:
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|
:
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計 |
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当
期
分
|
欠損金額等・害損失金 |
|
/ |
/ |
同上
のうち |
災害損失金 |
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/ |
|
青色欠損金 |
|
/ |
|
合 計 |
/ |
/ |
|
災
害 に よ り 生 じ た 損 失 の 額 の 計 算 |
災 害 の 種 類 |
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災 害 の や ん だ 日 |
平 ・ ・ |
当
期 の 欠 損 金 額 |
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差引災害により生じた損失の額 |
|
災害により生じた損失の額 |
|
繰越控除の対象となる損失の額 |
|
保険金又は損害賠償金等の額 |
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/ |
〔補足:非課税事業を行う法人の所得計算〕
林業、医療法人等の社会保険診療分等、事業税が非課税となる所得が含まれている場合は、課税所得と非課税所得に区分する必要があります。これに該当する場合は、6号様式別表5を作成して課税標準を算出します。
2.軽減税率等
3以上の都道府県に事業所を有する、資本金(出資金)が
一千万円以上の法人には軽減税率の適用がありません。それ以外の法人には軽減税率が適用されます。なお、令和元年10月1日以後に開始する事業年度からは地方法人特別税が特別法人事業税に移行し、それに伴い税率も改正されています。
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令和元年9月30日までに開始した事業年度
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令和元年10月1日以後に開始した事業年度
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事
業
税 |
年400万円以下の金額 |
3.4%(標準税率)
|
3.5%(標準税率)
|
年400万円を超え、年800万円以下の金額 |
5.1%(標準税率)
|
5.3%(標準税率)
|
年800万円を超える金額 |
6.7%(標準税率)
|
7.0%(標準税率)
|
軽減税率不適用法人 |
6.7%(標準税率)
|
7.0%(標準税率)
|
(旧)地方法人特別税又は特別法人事業税 |
43.2%(所得割及び収入割) |
37%(所得割) |
3.事業税申告書
〔事例〕
K社は資本金
25,000,000円の非分割法人です(本店以外に他の都道府県、市町村に支店・営業所等はありません)。
当期の所得金額(法人税申告書別表4の「合計額」欄の金額)は
67,926,087円、損金に算入した
所得税及び復興特別所得税
の額は 76,353 円です。
作成手順
①所得金額の計算
⇒
繰越欠損金がある場合は、6号様式別表9を作成しておきます。
②税額計算
③中間申告額の控除
摘
要 |
課
税 標 準 |
税
率 |
税
額 |
はじめに下段の「所得金額の計算」欄を記載し、
「68」-「69」を上段の「総額」欄に転記します。
「総額」の下の金額は
1,000円未満の端数を切捨てます。税額は 100円未満の端数を切捨てます。
|
所
得
割
|
所得金額総額(「68」-「69」) |
68,002,440 |
/ |
/ |
年400万円以下の金額 |
4,000,000 |
3.5/100 |
140,000 |
年400万円を超え、年800万円以下の金額 |
4,000,000 |
5.3/100 |
212,000 |
年800万円を超える金額 |
60,002,000 |
7.0/100 |
4,200,100 |
計 |
68,002,000 |
/ |
4,552,100 |
軽減税率不適用法人の金額 |
1
|
1 |
1
|
|
その他、収入金額に課税される場合や外形標準課税が適用される場合(略)。
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合 計 事 業 税 額 |
4,552,100 |
外形標準課税の調整額 |
|
特定寄附金税額控除額
|
|
仮装経理控除額 |
|
中間申告額 |
1,827,600 |
租税条約控除額 |
|
確定申告額
|
2,724,500 |
内
訳 |
所得割
|
2,724,500
|
付加価値割
|
|
資本割
|
|
収 入 割
|
|
見込納付額
|
|
差 引
|
2,724,500
|
<特別法人事業税>
摘
要 |
課
税 標 準 |
税
率 |
税
額 |
内
訳 |
所得割に係る特別法人事業税 |
4,552,100 |
37/100 |
1,684,200 |
収入割に係る特別法人事業税 |
|
|
|
合計特別法人事業税 |
1,684,200 |
仮装経理控除額 |
|
中間申告額 |
676,200 |
租税条約控除額 |
|
確定申告額 |
1,008,000 |
見込納付額 |
|
差 引 |
1,008,000 |
|
所
得
金
額
の
計
算 |
所得金額 (法人税の明細書(別表4)の(34)) |
|
67,926,087
|
加
算 |
損金の額に算入した所得税額・復興特別所得税額 |
|
76,353 |
損金の額に算入した海外投資損失準備金~ |
|
|
減
算 |
益金の額に算入した海外投資損失準備金~ |
|
|
外国の事業に帰属する所得以外の所得~ |
|
|
仮 計 |
68
|
68,002,440 |
繰越欠損金額等若しくは災害損失金額又は…
等があった場合の控除額 |
69
|
|
法人税の所得金額(法人税の明細書(別表4)の(52)) |
|
67,926,087
|
〔補足〕 |
6号様式別表5を作成する法人の場合は「所得金額の計算」欄は記載せず、6号様式別表5の計算結果を上段の「所得金額総額」欄に記載します。 |
|
税率は、都道府県によって異なります。 |
|
特別法人事業税の課税標準は標準税率で計算した所得割額(又は収入割額)です。事業税に超過税率が課される法人については、6号様式別表14を作成して、特別法人事業税の課税標準を別途計算しておきます。 |
〔2〕
道府県民税申告書
1.道府県民税の課税標準
道府県民税の課税標準は、法人税割と法人(事業所)の規模によって決められている均等割の2つです。
●法人税割の課税標準
⇒ 法人税額(法人税申告書別表1の「9欄」の金額)に数項目の加算・減算をします。調整する項目のうち、主なものは次の2点です。
加算
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試験研究費の法人税額の控除額 (地方税ではこの制度は認めていない。但し中小法人等に適用されるものを除く。)
|
減算
|
還付法人税額等の控除額
…
法人税について「欠損繰戻し」の適用を受けている場合に、法人税額の調整をします。地方税には「欠損繰戻し」の制度がないためです。欠損金は10年間の繰越控除としますが、その明細は6号様式別表2の3に記載します。
|
●均等割額の判定基準
◆平成27年4月1日前開始事業年度 |
法人税法が規定している期末の「資本等の金額(株主・出資者の拠出額)」と「従業員数」に応じた金額です。「資本等の金額」は法人税申告書別表5(1)の「差引翌期首現在資本金等の額」の合計額です。 |
◆平成27年4月1日以後開始事業年度
(市町村民税の均等割額の判定
基準も同様の改正があります) |
判定基準は原則として「資本金等の額」ですが、無償増資や無償減資などによって欠損補填を行った場合は、資本金+資本準備金 と 調整後の資本金等の額 を比較して大きい金額を税率区分の基準とします。
調整前の資
本金等の額
|
加算 |
平成22年4月1日以後に行った利益準備金・その他利益剰余金による無償増資の額 |
調整後の
資本金等の額 |
減算 |
平成13年4月1日~平成18年4月30日の間に行った減資(払い戻しを除く)による欠損の補填額、平成18年5月1日以後に行った剰余金による欠損補填額 |
無償増資や無償減資などによる欠損補填がなければ、当然
調整前=調整後です。多くの中小法人は従来通りでしょう。 |
●
第6号様式の「資本金(出資金)」の記載欄が、3区分になります。
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期末現在の資本金の額又は出資金の額 |
|
期末現在の資本金の額及び資本準備金の額の合計額 |
法人税申告書別表5(1) 「差引翌期首現在資本金等の額」 |
期末現在の資本金等の額 |
|
|
都民税の場合の均等割は、6号様式別表4の3にその明細を記載してから6号様式の該当欄に転記しますが、都民税以外は直接6号様式に記載します。
●法人税割の税率・均等割の金額につきましては、地方税申告書に同封されている「記載の手引き」等で確認してください。
2.道府県民税申告書 作成手順
法人税割額の計算
1.
課税標準の計算
2.
法人税割額の計算
3.
中間申告額の控除 |
均等割額
(都民税の場合は別表4の3で計算)
年額-中間申告額 |
確定法人税割額+確定均等割額 |
(使途秘匿税額等)
法人税額 (別表1(1)「9欄」) |
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15,102,832
|
試験研究費の特別控除額 |
|
|
還付法人税等の控除額(法人税の欠損繰戻しの場合) |
|
|
退職年金積立金に係る法人税額 |
|
|
課税標準となる法人税額 |
5 |
15,102,000 |
分割法人における課税標準となる法人税額 |
|
|
法人税割額 (税率 1.0/100) |
7 |
151,020 |
道府県民税の特定寄附金税額控除額 |
|
|
税額控除超過相当額の加算額
|
|
|
外国関係会社等に係る控除対象所得税額相当額 |
|
|
外国の法人税等の額の控除額 |
|
|
仮装経理に基づく法人税割額の控除額 |
|
|
差引法人税割額 |
|
151,000 |
既に納付の確定した当期分の法人税割額 (*) |
|
58,000 |
租税条約の実施に係る法人税割額の控除額 |
|
|
この申告により納付すべき法人税割額 |
|
93,000 |
均
等
割
額 |
算定期間中の事業所等の所有月数 |
|
12 |
(
50,000円)×月数/12 ) |
|
50,000 |
既に納付の確定した当期分の均等割額 |
|
25,000 |
この申告により納付すべき均等割額 |
|
25,000 |
この申告により納付すべき道府県民税 |
|
118,000 |
同上の見込み納付額 |
|
|
差
引 |
|
118,000 |
東京都に申告する場合の(7)の計算
|
特別区分の課税標準額
|
24
|
|
同上に対する税額 (税率 %)
|
25
|
|
市町村分の課税標準額
|
26
|
|
同上に対する税額 (税率 %)
|
27
|
|
(注) ●「課税標準となる法人税額」は
1,000円未満の端数を切捨てます。 ●「差引法人税割額」は
100円未満の端数を切捨てます。
●法人税割の税率を (1.0/100)
としていますが、これは標準税率です (
令和元年10月1日前に開始した事業年度は 3.2% )。
●(*)
⇒ 中間申告分の税額のうち、法人税割額です。
〔補足:都民税〕 東京都の特別区に所在する法人は第6号様式だけ作成し、第20号様式(市町村民税申告書)は作成不要です。5欄の「課税標準となる法人税額」を23欄に転記し、24欄の税率を掛けて7欄「法人税割額」の金額とします。特別区では道府県民税分と市町村民税分を合わせた税率になっています。 東京都でも市区町村に所在する場合は、他の道府県と同様、第6号様式の外第20号様式の作成が必要です。
〔3〕
還付請求額が生じる場合 欠損年度では、道府県民税、事業税とも「0」になるの通常です。また、前年度に較べ所得金額(その結果として法人税額)が減少した場合は、年税額が中間申告額より少なくなる場合があります。中間納付額があり、かつ
年税額<中間申告額 となる場合は、6号様式の下段中央に該当項目を記載して還付請求します。ただし、当然のことですが、道府県民税で還付請求の対象となるのは法人税割だけです。均等割は、欠損であっても納税義務が生じます。
還
付
請
求 |
中間納付額 |
|
中間納付額は
(「事業税・地方法人特別税」+「法人税割」)の合計額を記載します。
|
利子割額 |
|
還付を受けようとする金融機関及び支払い方法 |
銀行
支店
口座番号(普通)
1234567 |
〔補足:分割法人〕 2つ以上の都道府県に事業所等を有する法人は、課税標準を従業員数等を基準として、それぞれの都道府県に分割します。この分割の明細書を第10号様式といいますが、それぞれの都道府県に提出する第6号様式に添付します。詳しくは
⇒ 分割法人の地方税申告書
をお読みください。 |