〔1〕
税額控除
●法人税額の特別控除の適用を受ける場合は、その明細書(別表)を作成し該当金額(複数の適用を受ける場合は合計額)を別表1の「3」欄に記載します。
●幾つかの制度がありますが、主なものだけ挙げておきます。詳しくは、専門の解説書をお読みください。
■
中小企業者が取得等した機械装置の特別控除
■
試験研究費の特別控除
①
試験研究費の支出額が増加した場合の特別控除
②
試験研究費総額に対する特別控除
③
中小企業者が支出した試験研究費の特別控除(中小企業者は上記との選択が可能)
■
給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除
|
〔2〕
追加課税
1.土地譲渡益課税
土地の譲渡益は既に当期の「所得金額」の一部になっており、これに対しては通常の法人税が課せられますが、更に譲渡益の部分だけ別枠で課税されます。当期が欠損で通常の法人税がない場合でも同様です。
所有期間の長短によって税率等が異なり、使用する別表も異なります。
◆所有期間が5年を超える場合
⇒ 税率5%( 別表3(2) )
◆所有期間が5年以下の場合
⇒ 税率10%( 別表3(3) )
ただし、現在適用が停止されています。
2.特定同族会社の留保金額課税
●同族会社・特定同族会社の判定
同族会社は、株主(出資者)とその同族関係者からなる株主グループの上位3者で、発行済み株式総数(出資総額)の50%以上を所有する法人です。
特定同族会社は、上位1者の株主グループの判定で同族会社になる場合で、株式数による判定に
◆種類株式(普通株式以外の株式)を発行する会社
⇒ 議決権数による判定
◆持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)
⇒ 社員数による判定
も加えて、最も割合の高い基準で判定します。
※
資本金1億円以下の法人は特定同族会社の留保金課税は適用除外のため、同族会社か非同族会社かだけを判定します。
●別表2
K社の株主グループ上位3者の明細は以下の通りです。なお、K社は種類株式は発行しておらず、持分会社でもありませんからこれらに関係する部分は割愛します。
同族会社の判定 |
期末現在の発行済み株式数又は出資総額 |
600 |
特
定
同
族
会
社
の
判
定 |
(21)の上位1順位の株式数又は出資の金額 |
中小法人は対象外
|
(19)と(21)の上位3順位の株式数又は出資の金額 |
580 |
株式数等による判定 |
株式数等による判定 |
96.7% |
: |
: |
|
特定同族会社の判定割合 |
同
族 会 社 の 判 定 |
同族会社 |
判 定 結 果 |
同族会社 |
順
位 |
判定基準となる株主(社員)
及び同族関係者 |
判定基
準とな
る株主
等との
続 柄
|
株式数又は出資金額 |
被支配会社でない
法 人 株 主 等 |
その他の株主 |
株式
|
議決
|
株式数等
|
議決権数
|
株式数等
|
議決権数
|
住所又は所在地 |
氏名又は法人名 |
(19) |
(20)
|
(21)
|
(22)
|
1 |
|
○○市△△町1丁目 |
鈴木 太郎 |
本
人 |
|
|
320 |
|
1 |
|
同上 |
鈴木 花子 |
妻 |
|
|
80 |
|
1 |
|
○○市△△町5丁目 |
鈴木 幸一 |
長
男 |
|
|
30 |
|
2 |
|
□□町×××125番地 |
田中 宏 |
本
人 |
|
|
100 |
|
3 |
|
△△△市○○町523-12 |
山田 健二 |
本
人 |
|
|
50 |
|
1 |
|
1
: |
1 |
1 |
1 |
|
1 |
|
11 |
|
1
: |
1 |
1 |
1 |
|
1 |
|
1 |
|
1
: |
1 |
1 |
1 |
|
1 |
|
|
●留保金課税計算の概要
■課税対象法人
① 資本金が1億円を超える特定同族会社
②
資本金が1億円以下の法人であっても、親会社が資本金5億円以上の法人・相互会社等の100%子会社
■課税対象額
当期留保金額(別表4の「最終行②」の金額)+「前期末配当等の額」-「当期末配当等の額」-「当期の法人税額・地方法人税額・住民税額」を対象とします。住民税額は都道府県、市町村によって税率が異なりますが、ここでは
10.4%で計算します。この率は道府県民税、市町村民税(法人税割)の制限税率を合計したものです。 |
■留保控除額
次の3つの金額のうち最も多い金額を課税対象額から控除します。
利益積立金基準 |
利益積立金額が期末資本金額(出資金額)の25%相当額に満たない場合の、その満たない額 |
定額基準 |
年2000万円 |
所得金額基準 |
所得金額の40% |
|
■追加税額
(課税対象額-留保控除額)を計算し、追加課税額を算出します。
・年3000万円以下の金額 ⇒
税率は10%
・年3000万円を超え、年1億円以下の金額 ⇒
税率は15%
・年1億円を超える金額 ⇒
税率は20% |
●別表3(1) 参考
S社
(
資本金は3千万円ですが、資本金10億円の法人の100%子会社
)
の申告書作成も最終段階に入り、以下の金額が判明しています。なお、事業年度は令和5年4月1日~令和6年3月31日です。
別表4
|
所得金額「52欄の①」 |
71,845,747 |
別表1
|
法人税額「2欄」
|
***1716,811,904
|
留保所得金額「52欄の②」 |
59,376,685 |
控除する税額
「18欄」
|
233,707
|
別表5(1) |
期首利益積立金額 |
76,955,695 |
地方法人税額「38欄」
|
739,723
|
別表8
|
受取配当等の益金不算入額 |
675,301 |
税額控除額、追加課税額等
|
0
|
別表3(1)付表で留保控除額を計算し、別表3(1)で課税留保金額と税額を算定します。
●
別表3(1)付表
積立金基準の計算 |
期
末 資 本 金 額 又 は 出 資 金 額 |
1 |
30,000,000 |
所
得
基
準
の
計
算 |
(特殊な項目のため省略)
|
|
|
同
上 の 25 % 相
当 額 |
2 |
7,500,000 |
期
首 利 益 積
立 金 額 |
3 |
76,955,695 |
増
減 |
適格合併等による増加額 |
4 |
|
適格分割等による減少額 |
5 |
|
期
末 利 益 積
立 金 額 |
6 |
76,955,695 |
積
立 金
基
準 額 |
7 |
0 |
定額基準額
( 2,000万円 × 12/12 )
|
8 |
20,000,000 |
所得基準の計算 |
所得金額総計(別表4「52欄の①」) |
9 |
71,845,747 |
(特殊な項目のため省略) |
10 |
|
受取配当等の益金不算入額 |
11 |
675,301 |
(特殊な項目のため省略)
|
|
|
所 得 等
の 金 額 |
31 |
72,521,048 |
|
所得基準額(「31」の40%) |
32 |
29,008,419 |
|
留
保 控
除 額 |
33 |
29,008,419 |
●
別表3(1)
留 保 金 額 に 対 す る 税 額 の 計 算 |
課 税 留 保 金 額 |
税 額 |
年3000万円相当額以下の金額 |
1 |
9,309,000 |
(1)の 10% 相 当 額 |
5 |
930,900 |
年3000万円相当額を超え年1億円相当額以下の金額 |
2 |
|
(2)の 15% 相 当 額 |
6 |
|
年1億円相当額を超える金額 |
3 |
|
(3)の 20% 相 当 額 |
7 |
|
計 |
4 |
|
計 |
8 |
|
課 税 留 保 金 額 の 計 算 |
当期留保金額の計算
|
留保所得金額(別表4「52欄の②」)
(A) |
9 |
59,376,685 |
住
民
税
額
の
計
算 |
住民税額
計算の基
礎となる
法人税額
(※)
|
中小企業者等以外の法人
|
22 |
|
前 期 末 配 当 等 の 額
(B) |
10 |
11,000,000 |
当 期 末 配 当 等 の 額
(C) |
11 |
12,000,000 |
中 小 企 業 者 等
|
23
|
16,811,904 |
法人税額及び地方法人税額
(D)
|
12 |
17,317,920 |
住 民 税 額
(E) |
13 |
2,740,349 |
(略) |
14 |
|
住
民 税 額 ( 10.4% ) |
24 |
2,740,349 |
法 人 税 額 等 の 合 計 額 |
15 |
20,058,269 |
特定寄附
金を支出
した場合 |
|
|
|
(略) |
|
|
(略) |
|
|
当期留保金額 ((A)+(B)-(C))-(D)-(E) |
19 |
38,318,416 |
留
保 控
除 額 |
20 |
29,008,419 |
|
|
|
課
税 留 保 金 額 (1,000円未満切捨て) |
21 |
9,309,000 |
住 民 税 額 |
28 |
2,740,349 |
(D)では所得税額を控除し、地方法人税額を加算します
(※)
は(別表1「2」+「4」+「6」+「9の外書」-「11」-「17」-別表6(6)「
法人税額の特別控除額(一部除外)」
所得税額を控除せず、地方法人税額を加えません
■ここで計算する住民税額は、留保金額算定のための金額ですから1円の位まで計算します。
■留保控除額は次のうち、最も多い金額です。
・積立金基準額
0
・所得基準額
29,008,419
・定額基準額
20,000,000
|