〔1〕
損金算入、損金不算入の区分
損金算入となる租税公課のうち、主なものは次の通りです。
・事業税(及び特別法人事業税、以下単に事業税とします)
・事業所税
・自動車税、固定資産税
・消費税(税込経理の場合)及びその他の間接税
・利子税、延滞税(確定申告期限の延長の場合)
(補足:
事業税は「前期確定申告額」と「当期中間申告額」が当期の損金になります。)
損金不算入の租税公課のうち、主なものは次の通りです。
・法人税(及び地方法人税、以下単に法人税とします)、住民税の本税
・法人税にかかる延滞税及び各種の加算税
・地方税にかかる延滞金及び各種の加算金
・罰金、過料、科料
・税額控除を受ける場合の所得税
〔2〕
納付税額の処理
1.租税公課の経理処理
別表5(2)の「当期中の納付税額」欄は「充当金取崩による納付」「仮払経理による納付」「損金経理による納付」に区分されています。この区分は難しくはありませんが、それぞれどうような場合が該当するかは、押さえておく必要があります。
〔
別表5(2)の上部 〕
税目及び事業年度 |
期
首 現 在
未
納 税 額 |
当期発生税額 |
当
期 中 の 納 付 税 額 |
期
末 現 在
未
納 税 額
|
充当金取崩による納付
|
仮払経理による納付
|
損金経理による納付
|
① |
② |
③ |
④ |
⑤
|
⑥ |
|
:
|
|
|
|
|
|
|
:
|
|
|
|
|
|
|
法人税・住民税・事業税等中間申告制度が採られている税金の経理方法には、中間申告額と確定申告額をそれぞれ別個に処理する方法と、年税額を一括して処理する方法があります。
別個に処理する方法
●中間申告額を費用に計上し、確定申告額を未払計上する方法
■中間申告額の納付時 |
|
|
法人税等 1,250,000 |
現金預金 1,250,000 |
⇒ 損金経理による納付 |
■決算で確定申告額を未払計上 |
|
|
法人税等 2,100,000 |
未払法人税等
2,100,000 |
|
一括して処理する方法
●中間申告額を「仮払金」で処理し、年税額を未払計上する方法
■中間申告額の納付時 |
|
|
仮払法人税等 1,250,000 |
現金預金
1,250,000 |
⇒ 仮払経理による納付 |
■決算で年額を未払計上 |
|
|
法人税等 3,350,000
|
未払法人税等
3,350,000
|
|
この方法で処理した場合は、(未払法人税等-仮払法人税等)の額が確定申告額に一致します。
翌期の確定申告額の納付時に「仮払法人税等」を「未払法人税等」と相殺した場合は、「納税充当金による仮払税金消却」に該当します。 |
●中間申告額を「未払法人税等」で処理し、年税額を未払計上する方法
■中間申告額の納付時
|
|
|
未払法人税等 1,250,000
|
現金預金
1,250,000
|
⇒ 充当金取崩による納付
|
■決算で年額を未払計上
|
|
|
法人税等 3,350,000
|
未払法人税等
3,350,000
|
|
この方法で処理した場合は、未払法人税等の期末残高が確定申告額に一致します。
|
●翌期の処理は、いずれも「充当金取崩による納付」に該当します。
未払法人税等 2,100,000 |
現金預金 2,100,000 |
2.充当金取崩しによる納付
納付する税金 |
別表4 |
別表5(1) |
損金不算入税
|
法人税・住民税の本税 |
処理なし |
納税充当金の当期減少
未納法人税等(△)の当期減少
差引き増減なし |
附帯税 |
加算・流出
減算・留保
差引き増減なし |
納税充当金の当期減少 |
損金算入税 |
事業税・利子税・延滞金等 |
減算・留保 |
納税充当金の当期減少 |
法人税等損金不算入税の納付に伴い納税充当金を取崩しても(損金不算入税を損金経理していませんから)所得金額は変動しません。しかし、納税充当金は減少しますから、別表5(1)のいわば「内部振替え」をします(
前節 参照)。
附帯税は社外流出の扱いですから、別表4と別表5(1)の関連から、別表4で加算・減算の両建処理をします。法人税・住民税の本税は前事業年度終了時点で、マイナスの利益積立金額になっているのに対し、附帯税はそうはなっていませんから社外流出とします。
損金算入税を納税充当金を取崩して納付した場合は、未処理のままでは損金に算入されませんから別表4で減算、別表5(1)で納税充当金の当期減少の処理をします。
〔例〕前期確定分の法人税・住民税・事業税を納付し「未払法人税等」「未払事業税」を消却した。
法人税
道府県民税
市町村民税
事業税 |
4,500,000
380,000
1,040,000
742,000 |
納税充当金取崩し合計
6,662,000 |
|
〔
別表4 〕
区 分 |
総 額 |
留 保 |
社 外 流 出 |
当期利益又は当期欠損の額
|
|
|
配 当
|
11
|
その他
|
1
|
加算
|
|
|
|
|
|
減算 |
納税充当金から支出した事業税等の額
|
742, 000
|
742, 000
|
|
1
|
仮 計
|
1
|
1
|
|
1
|
1 |
1
|
1
|
|
1
|
所得金額又は欠損金額
|
1
|
1
|
1
|
1
|
〔
別表5(1) 〕
区
分 |
期 首 現 在
利益積立金額 |
当
期 の 増 減 |
翌期首現在
利益積立金額 |
減 |
増 |
利益準備金
|
|
|
|
|
納税充当金
|
6,662,000
|
6,662,000
|
|
|
未
納
税
|
未納法人税等
未納道府県民税
未納市町村民税 |
△
4,500,000
△
380,000
△
1,040,000
|
△
4,500,000
△
380,000
△
1,040,000
|
△
△
△
|
△
△
△
|
差 引 合 計 額
|
|
|
|
|
「納税充当金から支出した事業税等の額」は、納税充当金の当期減少額の一部になります。
3.損金経理による納付
事業税等の損金算入税は、当然申告調整不要です。
納付する税金 |
別表4 |
別表5(1) |
損金不算入税 |
法人税・住民税の本税 |
加算・留保 |
未納法人税等(△)の当期減少 |
附帯税 |
加算・流出 |
処理なし |
〔例〕当期中間申告額を納付し、いずれも費用に計上した。
法人税
道府県民税
市町村民税 |
3,642,000
304,500
987,000 |
住民税合計
1,291,500 |
|
〔
別表4 〕
区 分 |
総 額 |
留 保 |
社 外 流 出 |
当期利益又は当期欠損の額
|
|
|
配 当
|
11
|
その他
|
1
|
加算
|
損金経理法人税等
損金経理住民税
|
2
3
|
3,642,000
1,291,500
|
3,642,000
1,291,500
|
|
|
減算 |
|
|
|
|
1
|
仮 計
|
1
|
1
|
|
1
|
1 |
1
|
1
|
|
1
|
所得金額又は欠損金額
|
1
|
1
|
1
|
1
|
〔
別表5(1) 〕
区
分 |
期 首 現 在
利益積立金額 |
当
期 の 増 減 |
翌期首現在
利益積立金額 |
減 |
増 |
利益準備金
|
|
|
|
|
繰越損益金
|
|
|
|
|
未
納
税
|
未納法人税等
未納道府県民税
未納市町村民税 |
△
4,500,000
△
380,000
△
1,040,000
|
△
8,142,000
△
684,500
△
2,027,000
|
(中間)△
3,642,000
(中間)△
304,500
(中間)△
987,000
|
△
△
△
|
差 引 合 計 額
|
|
|
|
|
別表5(1)の当期増加欄は、別表4と無関係です(前節参照)。別表4で加算(留保)した金額は、当期減少欄の金額に加算されます。
4.仮払経理による納付
納付する税金 |
別表4 |
別表5(1) |
損金不算入税 |
法人税・住民税の本税 |
加算・留保
減算・留保
差引き増減なし |
未納法人税等(△)の当期減少
仮払法人税等(△)の当期増加
差引き増減なし |
附帯税 |
加算・流出
減算・留保
差引き増減なし |
仮払税(△)の当期増加 |
損金算入税 |
事業税・利子税・延滞金等 |
減算・留保 |
仮払税(△)の当期増加 |
損金不算入税を納付し、仮払金に計上しても所得金額は変動しませんが、本税等の場合は未納法人税等が減少し、仮払法人税等が増加します。別表5(1)との関係から、別表4では加算・減算の両建処理をします。また、附帯税は社外流出の扱いですが、△の利益積立金額が増加します。
次にように考えると、理解しやすいと思います。
法人税等(附帯税)
仮払金 |
*********
********* |
現金預金
雑収入 |
*********
********* |
これは架空の利益のため減算する |
損金算入税は法人が損金経理していなくても損金になりますから、別表4で減算し別表5(1)で△の利益積立金額の増加の処理をします。
〔例〕当期中間申告額を納付し、いずれも仮払金とした。
法人税
道府県民税
市町村民税
事業税 |
3,642,000
304,500
987,000
1,438,000 |
仮払金合計
法人税等
事業税
|
4,933,500
1,438,000
|
|
〔
別表4 〕
区 分 |
総 額 |
留 保 |
社 外 流 出 |
当期利益又は当期欠損の額
|
|
|
配 当
|
11
|
その他
|
1
|
加算
|
損金経理法人税
損金経理住民税
|
2
3
|
3,642,000
1,291,500
|
3,642,000
1,291,500
|
|
|
減算 |
仮払法人税等認定損
仮払事業税認定損
|
4,933,500
1,438,000 |
4,933,500
1,438,000 |
|
1
|
仮 計
|
1
|
1
|
|
1
|
1 |
1
|
1
|
|
1
|
所得金額又は欠損金額
|
1
|
1
|
1
|
1
|
〔
別表5(1) 〕
区
分 |
期 首 現 在
利益積立金額 |
当
期 の 増 減 |
翌期首現在
利益積立金額 |
減 |
増 |
利益準備金
:
仮払法人税等
仮払事業税
|
|
|
△
4,933,500
△
1,438,000 |
|
繰越損益金
|
|
|
|
|
未
納
税
|
未納法人税等
未納道府県民税
未納市町村民税 |
△
4,500,000
△
380,000
△
1,040,000
|
△
8,142,000
△
684,500
△
2,027,000
|
(中間)△
3,642,000
(中間)△
304,500
(中間)△
987,000
|
△
△
△
|
差 引 合 計 額
|
|
|
|
|
なお、仮払経理した中間申告額を決算で費用に振替えた場合は、当然ですが損金経理に該当します。
〔3〕
仮払税の消却
仮払税を翌期以降に消却した場合は、消却方法によりそれぞれ次の処理をします。全ての税目について、処理方法は共通です。
●納税充当金による消却
未払○○税 ******
仮払○○税 ******
別表4 |
別表5(1) |
処理なし |
仮払○○税(△)の当期減少
納税充当金の当期減少
差引き増減なし(内部振替え) |
●損金経理による消却
○○税 ******
仮払○○税 ******
別表4 |
別表5(1) |
加算(留保) |
仮払○○税(△)の当期減少 |
〔4〕
当期確定申告額
法人税・住民税の当期確定申告額は、中間申告額と同様別表4を経由することなく別表5(1)の「利益処分増減」欄に記載します。これは、法人の経理処理(未払計上するか否か)に関わりません。
〔例〕当期の確定申告額は以下の通りです。
法人税
道府県民税
市町村民税 |
4,500,000
380,000
1,200,000 |
〔
別表5(1) 〕
区
分 |
期 首 現 在
利益積立金額 |
当
期 の 増 減 |
翌期首現在
利益積立金額 |
減 |
増 |
利益準備金
|
|
|
|
|
繰越損益金
|
|
|
|
|
未
納
税
|
未納法人税等
未納道府県民税
未納市町村民税 |
△
△
△
|
△
△
△
|
(確定) △ 4,500,000
(確定) △
380,000
(確定) △
1,200,000
|
△
4,500,000
△
380,000
△
1,200,000
|
差 引 合 計 額
|
|
|
|
|
法人税・住民税の当期確定申告額は、別表5(1)以外に別表5(2)の該当欄にも記載しますが、事業税の確定申告額は記載しません。これは事業年度終了時点では、事業税は租税債務が発生しないためです。
当期確定申告額を未払計上(納税充当金繰入)した場合は、次の処理が必要です。
〔
別表4 〕
区 分 |
総 額 |
留 保 |
社 外 流 出 |
当期利益又は当期欠損の額
|
|
|
配 当
|
11
|
その他
|
1
|
加算
|
損金経理納税充当金
|
5
|
6,100,000
|
6,100,000 |
|
|
減算 |
|
|
|
|
1
|
仮 計
|
1
|
1
|
|
1
|
1 |
1
|
1
|
|
1
|
所得金額又は欠損金額
|
1
|
1
|
1
|
1
|
〔
別表5(1) 〕
区
分 |
期 首 現 在
利益積立金額 |
当
期 の 増 減 |
翌期首現在
利益積立金額 |
減 |
増 |
利益準備金
|
|
|
|
|
納税充当金
|
|
|
6,100,000 |
6,100,000
|
未
納
税
|
未納法人税等
未納道府県民税
未納市町村民税 |
△
△
△
|
△
△
△
|
(確定)△ 4,500,000
(確定)△ 380,000
(確定)△ 1,200,000
|
△
4,500,000
△
380,000
△
1,200,000
|
差 引 合 計 額
|
|
|
|
|
|