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【還付請求が発生する場合】


〔1〕 還付請求額の税務処理

法人税・住民税の確定申告額は法人の経理処理とは無関係に(未払計上する、しないに関わらず)別表5(1)及び別表5(2)に記載します。還付請求額が発生する場合も同様に、法人の経理処理とは無関係に(未収計上等の処理をする、しないに関わらず)マイナスの確定申告額として別表5(1)及び別表5(2)に記載します。

〔事例〕

 区   分

中間申告額(損金)

年 税 額

還 付 請 求 額

 

 

 

(   )の金額は均等割の要納付額です

 

 法人税等

 道府県民税

  法人税割

  均等割

 市町村民税

  法人税割

  均等割

1,000,000

 

60,000

25,000

 

180,000

65,000

500,000

 

30,000

 50,000

 

 90,000

130,000

500,000

 

30,000

 (25,000)

 90,000

(65,000)

 合   計

1,330,000

 

800,000

 

620,000

(90,000)

〔 別表5(1) 〕

 

 

住民税の還付請求額は、均等割の要納付額を差し引く前の金額です。差し引き後の純額は

  620,000 -(25,000+65,000)= 530,000 円

になります。

区        分

期 首 現 在

利益積立金額

当 期 の 増 減

翌期首現在

利益積立金額

利益準備金

未収還付法人税等

繰越損益金

 

1

 

 

1

 

 620,000 

620,000  

納税充当金

    1  

1         

   1    

1

未納法人税等

未納道府県民税

未納市町村民税

111111111

△          

△      

111111111

△        

△        

        △ 11111111

(確定)△      25,000

(確定)△      65,000

△      1111          11 

△                  25,000

△                  65,000

 差 引 合 計 額

1

1

1

1

〔 別表5(2) 〕 … 還付請求額は中間納付額に未納額がなければ、⑥欄にそれぞれ外書きします。また、住民税の還付請求額は、均等割の要納付額を差し引いた後の金額を記載します。

税目及び事業年度

期首現在

未納税額

当期発生

税      額

当  期  中  の  納  付  税  額

期末現在

未納税額

充当金取崩に

よ る 納 付

仮払経理に

よ る 納 付

損金経理に

よ る 納 付

法人税

(前 期 分)

 

 

 

 

 

 

 中    間

 

 

 

 

 

 

 確    定

 

 

△    500,000

 

 

 

△     500,000

 

     計

 

 

 

 

 

 

道府県民税

(前 期 分)

 

 

 

 

 

 

 中    間

 

 

 

 

 

 

 確    定

 

 

△       5,000

 

 

 

△       5,000

 

     計

 

 

 

 

 

 

市町村民税

(前 期 分)

 

 

 

 

 

 

 中    間

 

 

 

 

 

 

 確    定

 

 

△      25,000

 

 

 

△      25,000

 

     計

 

 

 

 

 

 

(以下略)

〔2〕 中間申告額及び還付請求額の経理処理

中間申告額>年税額となった場合はその差額が還付されますが、中間申告額の納付及び還付請求額の経理処理には幾つかの方法が考えられます。

納付時の処理

決算時の処理

還付請求額が生じない場合

還付請求額が生じる場合

 

費 用

 

 

 

 

費用のまま処理する

 

 

 

費用のまま処理し、還付請求額は未収計上等の処理をしない

費用のまま処理し、還付請求額を別途未収計上する

還付請求額を仮払金に振替え、残額を費用とする

仮払金

 

全額を費用に振替える

年税額相当額を費用に振替え、残額は仮払金とする

E |年税額相当額を未払い計上し仮払金は翌期に処理する

未払金の減少

年税額相当額を未払計上する

年税額相当額を未払計上し、借方残額は未収金或いは仮払金に振替える

還付請求額は実際に申告書を作成するまで金額が確定しません。従って、申告書の作成をまたずに概算で決算を終了する場合は、概算額で処理することになります。これは、確定申告額を概算で未払計上して決算を終了するのと同じです。

上の表では処理方法を色々と書いていますが、まとめてしまえば次の3通りになります。

処理しない

 

還付請求額が生じても経理処理をしない場合は、還付請求額は貸借対照表に表示されず簿外資産になります。金額が大きい場合は適切な決算とはいえません。また、確定申告額を未払計上する限り、還付請求額についても何らかの処理をすべきでしょう。

仮払金に振替える

 

仮払金  620,000   法人税等            530,000

            未払法人税等     90,000 ( 均等割額 )

未収計上

未収金  620,000   雑収入   620,000

未収金にせよ仮払金にせよ、借方で資産に計上し、貸方で収益計上或いは費用の減少をしていますから、実質的には同内容です。従って、税務処理でも同じ処理になります。ここでは、処理方法が明快な「仮払金」で処理する方法を説明していきます。

●別表5(2)の経理区分を「仮払経理」と「損金経理」に分けて記載することになります。

〔 別表5(2):仮払金で処理した場合〕 

税目及び事業年度

期首現在

未納税額

当期発生

税      額

当  期  中  の  納  付  税  額

期末現在

未納税額

充当金取崩に

よ る 納 付

仮払経理に

よ る 納 付

損金経理に

よ る 納 付

法人税

(前 期 分)

 

 

 

 

 

 

 中    間

 

 1,000,000

 

500,000

500,000

0

 確    定

 

 

△  500,000

 

 

 

△  500,000

 

     計

 

 500,000

 

 500,000

 500,000

△  500,000

道府県民税

(前 期 分)

 

 

 

 

 

 

 中    間

 

 85,000

 

30,000

55,000

0

 確    定

 

 

△   5,000

 

 

 

△   5,000

 

     計

 

80,000

 

30,000

55,000

△   5,000

市町村民税

(前 期 分)

 

 

 

 

 

 

 中    間

 

245,000

 

90,000

155,000

0

 確    定

 

 

△  25,000

 

 

 

△  25,000

 

     計

 

220,000

 

90,000

155,000

△  25,000

(以下略)

●別表4で加算と減算の両建処理、別表5(1)で仮払法人税等の当期増加の申告調整が必要です( 租税公課と申告調整 参照 )。

〔 別表4 〕

区         分

総    額

留    保

社 外 流 出

当期利益又は当期欠損の額

  

              1

1               

配 当

11

その他

11

加算

損金経理法人税等

損金経理住民税

損金経理納税充当金

 

1

1,000,000

330,000

90,000

 

1,000,000

330,000

 90,000

 

1

1111111111111

減算

仮払法人税等認定損

 

 1

           620,000

        620,000

 1

1

〔 別表5(1) 〕

区        分

期 首 現 在

利益積立金額

当  期   の  増  減

翌期首現在

利益積立金額

利益準備金

仮払法人税等

未収還付法人税等

繰越損益金

 

1111111111

 

 

1111111

 

△      620,000

 620,000

    △   620,000

       620,000

納税充当金

1      

   1 1111111  

   90,000 

            90,000

未納法人税等

未納道府県民税

未納市町村民税

△     

△          

△      

△      

△        

△        

△                  

(確定)△      25,000

(確定)△      65,000

  △            25,000

△            25,000

△            65,000

 差 引 合 計 額

1

1

1

1

■「未収還付法人税等」は法人の経理処理とは無関係に生じる、マイナスの確定税額です。他方、「仮払法人税等」は法人の経理処理の申告調整によって生じたマイナスの利益積立金額です。

マイナスの確定税額  ⇒確定申告額は△の利益積立金額です。従って、還付請求額は△のマイナスで+の金額になります。

〔3〕 事業税の還付請求額の処理

事業税は事業年度終了時点では租税債務は発生しませんから、当期の確定申告額も還付請求額も別表5(1)及び別表5(2)に記載しません。

●還付請求相当額 ( 中間申告額の全額又は一部 を「仮払金」に振替えた場合は、別表5(2)の「仮払経理」欄に該当金額を記載するほか、次の処理が必要です。

   別表4    減算(留保) 「仮払事業税認定損」

   別表5(1)  「△仮払事業税」の当期増加

●「仮払金」でなく未収計上した場合も、「仮払金」の処理に準じて処理します。

●地方法人特別税を含めて処理するときは「事業税等」と記載すればよいでしょう。

〔4〕 所得税の還付請求額の処理

所得税の還付金は、申告書を提出した年度の益金に算入したうえで、益金不算入の処理をします。

●還付請求額が生じた年度に未収計上等の処理をしていない場合

当期は申告調整不要です。

翌期に収益計上した場合は、別表4の「19」欄(所得税額及び欠損金の繰戻しによる還付金額等)」で所得減算(流出)の処理をします。

●還付請求額が生じた年度に未収計上等の処理をしている場合

当期の益金にはなりませんから、所得減算の申告調整をします。

   別表4    減算(留保) 「未収計上した還付所得税」

   別表5(1)  「△未収還付所得税」の当期増加

翌期に還付金を受け入れて未収金を消却した場合は、別表4では加算・減算の両建て処理、別表5(1)では前期繰越分の消却処理をします。

   別表4    加算(留保) 「未収還付所得税消却」

           減算(※)   「19」欄に該当金額を記載します

   別表5(1)  「△未収還付所得税」の当期減少

〔補足:利子割額の還付請求〕

利子割は道府県民税法人税割の一部で、これと切り離して処理することはありません。欠損年度等で、所得税と利子割だけの還付請求となった場合でも、利子割の還付請求額はマイナスの確定税額として、法人の経理処理とは無関係に、別表5(1)、別表5(2)に記載します。

〔5〕 還付請求額が発生する場合の、別表4と別表5(1)の照合計算

還付請求額は、別表5(1)では「未収還付法人税」等の項目名を付して、「未納税」以外の欄に記載します。しかも、この金額は確定税額と同様に別表4を経由せず、別表5(1)に直接記載します。

従って、別表5(1)の欄外に記載されている照合計算式は、還付請求額が生じている場合は、この金額も除外する必要があります。

図解しておきます。|□□□□  の部分は、別表4と別表5(1)は無関連です。

〔 別表4 〕

区         分

総    額

留    保

社 外 流 出

当期利益又は当期欠損の額

1

配 当

   1

その他

 1

加算

1

1

その他

         1

        

減算

1

1

 1

 1

      仮           計

1

1

1

1

    1

1

仮計以降は全て流出

1

1

   所得金額又は欠損金額

1

1

1

12

〔 別表5(1) 〕

区               分

期 首 現 在

利益積立金額

当 期  の 増 減

翌期首現在

利益積立金額

利益準備金

(   )積立金

 

 

 

 

 

未収還付法人税等

 

 

未収還付法人税等

 

繰越損益金

 

 

未納法人税等

未納道府県民税

未納市町村民税

 

当期中間申告額

当期確定税額

 

 差 引 合 計 額

 

 

 

 

 


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