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【解散の経理と解散確定申告】


税務では、事業年度開始日から解散の日までを1事業年度とみなします ( みなし事業年度 ) 。解散の日の翌日からは清算事務年度が始まり、この事務年度の期間は清算結了までの期間です。清算会社については、清算事務年度を (みなし )事業年度とします。

■ 解散時の決算書

会社法の定めにより、解散日現在の財産目録を作成しなければなりませんが、この財産目録に計上する資産等の価額は原則としては 「処分価額」 です。解散の日の翌日から清算事務年度が始まりますが、清算事務年度の(開始)貸借対照表 は財産目録を基に作成します。

ただし、処分価格についての具体的な規定はありません。また、処分価格での評価が困難なものについては、従前の簿価でもかまいません (それ以外に方法がありません )。 一般的には次の様な基準になります。

売上債権

貸倒及び回収費用の見積額を控除する

棚卸資産

処分価格-処分費用 ( 処分価格の判定が困難な場合は取得原価 )

有形資産

同上

無形資産

処分不能のものは「0」

繰延資産

「0」

退職金

支払額が確定しているものは、未払金に計上

支払利息

解散日までの経過利息を未払金に計上

法人税等

確定申告分を未払金に計上。

清算会社の会計帳簿は、この財産目録に計上された金額を取得価額とみなして記帳することになります。目録ですから、各科目については、取引先ごとに金額が判明しているものは別個に記載します。

貸借対照表は、通常の決算時には「資産の部」「負債の部」「純資産の部」とも更に細分して表記しますが、清算会社では資産は換価(現金化)され、債務は清算結了までに弁済されることを予定していますので、流動・固定の区分は無意味です。清算手続きは残余財産の確定が目的ですから、細分表示する実益はありません。

財 産 目 録

平成××年××月××日 現在

資産の部

科   目

摘      要

金   額

現金預金

売  掛 金

 

 

棚卸資産

手許現金、○○銀行普通預金

債務者 (株)上山興産

債務者 (有)下川商店

 

 

 

資産の部 合計

 

負債の部

科   目

摘      要

金   額

買 掛 金

 

 

未 払 金

 

借 入 金

 

債権者 三宝産業(株)

債権者 (株)四輪興業

 

従業員未払給与、退職金

△△税務署等

○○銀行

鈴木一郎

 

 

負債の部 合計

 

正味資産の部

差引 正味資産の部

 

貸 借 対 照 表

平成××年××月××日 現在

資産の部

負債の部

科   目

金   額

科   目

金   額

現金預金

売  掛 金

棚卸資産

建   物

 

 

 

 

 

 

買 掛 金

未 払 金

借 入 金

 

 

 

純資産の部

純 資 産

 

資産の部合計

 

負債・純資産の部合計

 

注記

 次の資産については、処分価格を付すことが困難なため、それぞれ次の金額を計上しています。

 棚卸資産 … 最終仕入原価法により評価した金額

 建   物 … 取得価額から減価償却累計額を控除した金額

 

 

解散の日を含む事業年度も、それまでの事業年度と同様に「各事業年度の所得金額」に対して課税されます。従って、従来通りの手順で作成した解散日現在の決算書類が必要で、貸借対照表は取得原価で作成することになります。

解散日現在の貸借対照表(税務用)は簿価で、解散日翌日の貸借対照表(会社法用)は時価となると、当然金額にずれが生じます。この問題についての見解は

● 税務申告用の決算書と会社法の定めによる貸借対照表の両建てとし、税務申告書は取得原価の決算書を基に作成する

● この問題については触れない

に分かれていて、確たる基準は確立されていないようです。会計帳簿の継続を前提にすれば

● 税務申告書は取得原価の決算書を基に作成する

● 清算会社への移行時に、財産目録に計上した金額に合致するよう廃棄・売却損・評価損を計上する

方法しかなさそうです。

■ 解散確定申告

解散の日の翌日から2ケ月以内に、解散確定申告が必要です。通常の確定申告と同様

● 所得金額に対して課税されます

● 確定した決算に基づいて行わなければなりません

● 申告書の用紙も同じものを使用します ( 申告区分は解散確定申告で、地方税の申告書にも解散確定申告と記載します  )

● 添付資料も通常の確定申告と同様です

以下は、申告書の作成にあたっての注意点です。

● 解散のあった事業年度では計算月数が 「12」 未満になる場合がほとんどですから

     月割計算の必要な事項

交際費

中小法人の定額控除額

1ケ月未満切上げ

繰延資産の償却限度額

均等償却するもの

1ケ月未満切上げ

一般寄付金の損金算入限度額

「11」欄(同上の月数換算額)

期末資本金等の額×(その事業年度の月数)÷12×0.25

1ケ月未満切捨て

法人税の軽減税率区分

年800万円以下相当額

1ケ月未満切上げ

事業税の軽減税率区分

年400万円、年800万円

1ケ月未満切上げ

住民税均等割額

 

1ケ月未満切捨て(1ケ月に満たない場合は1ケ月)

  普通償却限度額は改定償却率又は改定耐用年数で計算します (月数の端数は切上げ )

◆平成19年3月までに取得した資産

旧定額法

改定償却率 = 償却率 × 解散事業年度の月数 ÷ 12 ( 小数点3位未満切上げ )

旧定率法

改定耐用年数 = 法定耐用年数 × 12 ÷ 解散事業年度の月数 ( 1年未満切捨て …  この計算式で算定した年数が100年を超える場合は、期首帳簿価額×通常の償却率÷12×月数 で計算します  )  

◆平成19年4月以後に取得した資産

定額法

改定償却率 = 償却率 × 解散事業年度の月数 ÷ 12 ( 小数点3位未満切上げ )

定率法

A = 帳簿価額 × 償却率   B = 取得価額 × 保証率

A>Bの場合   改定償却率 = 償却率 × 解散事業年度の月数 ÷ 12 ( 小数点3位未満切上げ )

A<Bの場合   改定償却率 = 改定償却率 × 解散事業年度の月数 ÷ 12 ( 小数点3位未満切上げ )  

通常の償却率で計算した後で月数按分する場合と、改定償却率で計算する場合では、端数処理の分だけ差額が生じます。改定償却率は端数切上げなので、ほとんどの場合償却限度額は大きくなります。

〔例〕 旧定額法  取得価額 5,000万円の建物  耐用年数=25年 償却率=0.040 解散事業年度の月数=7

月数按分する場合

4,500 × 0.040 × 7 ÷ 12 = 105

改定償却率で計算する場合

4,500 × 0.024 = 108  (  0.040 × 7 ÷ 12 ≒ 0.024  )

● 特別償却 … 主な特別償却は不適用です。

● 税額控除 … 所得税額・外国税額の控除は認められますが、その他の特別控除(試験研究費特別控除等)は認められません。

● 欠損繰戻還付請求 … 還付請求できます ( 法人税のみ ) 。

● 資産の評価損など … 解散を理由にした評価損は認められません。決算で評価損を計上している場合は、申告調整(所得加算)が必要です。

 


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