手順1
… 支給額などを集計する
まずその年の1月から12月までに支給した給与・賞与の総額と既に徴収した税額などを個人別に集計します。
● |
一定額以下の通勤手当など非課税の額と、社会保険料の徴収額は別個に集計します。 |
● |
未払給与・賞与がある場合は、給与・賞与の未払額と未徴収の所得税額を別に集計します。 |
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手順2
… 給与所得控除
所得税が課税されるのは給与所得額であって、給与収入額ではありません。
● |
非課税の給与は所得税法上の給与等には該当しません (給与等の支給額-非課税額=課税給与額)。 |
● |
(課税給与額-給与所得控除額=給与所得額)に対して所得税が課税されますから、給与所得控除額を求めます。
個人事業者であれば
(事業収入-必要経費=事業所得)
となりますが、給与所得者の場合は
(課税給与額-給与所得控除額=給与所得額)
になります。
給与所得控除額そのものを求める表はなく、「給与所得控除後の給与等の金額」を一覧表から探し出します。
「令和○年度分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」
給与等の金額 |
給与所得控除後
の給与等の金額 |
給与等の金額は非課税となる支給額を含まない額で、社会保険料の控除前の額です。
■給与収入額です
■給与所得額です
A
⇒ 給与等の金額 × 90% - 1,100,000 B
⇒ 給与等の金額 - 1,950,000 |
以上 |
未満 |
: |
: |
|
6,412,000
|
6,416,000
|
4,689,600
|
: |
: |
|
6,600,000 |
8,500,000 |
A |
8,500,000 |
20,000,000 |
B |
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手順3
… 所得控除
所得金額が同じであっても、扶養家族の多い少ない、本人が健常者か障害者かなどで税の負担力が異なります。そこで所得金額から扶養家族などに応じた金額と社会保険料などを控除して、その残額に所得税が課税される仕組みになっています。
「(給与所得額-所得控除額)×税率-税額の調整額=年税額
」 のうち、所得控除額 を計算します。
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従業員から提出してもらう書類 |
控除の内容 |
基礎控除の算定 |
基礎控除申告書 |
所得金額によって控除額は異なります。 |
「令和6年分
給与所得者の基礎控除申告書 兼
給与所得者の配偶者控除申告書 兼
年末調整に係る定額減税のための申告書 兼
所得金額調整控除申告書(基・配・所)」の1枚の用紙になっています。 |
所得金額調整控除額の算定 |
所得金額調整控除申告書 |
給与の収入金額が850万円を超える人が対象です。 |
配偶者控除額又は
配偶者特別控除額の計算
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配偶者控除等申告書 |
1年間の所得金額が一定金額以下の配偶者については、一定額の控除が認められています。 |
扶養控除等の控除額の計算 |
扶養控除等(異動)申告書 |
扶養控除の他、本人が控除を受ける項目(障害者・ひとり親・勤労学生など)に該当していないか確認し、それぞれに該当する場合は控除額を計算します。 |
保険料の控除額の計算 |
保険料控除申告書 |
その年の、生命保険料・地震(損害)保険料の支払額のうち、一定額を控除します。また、給与などから徴収した社会保険料以外に社会保険料の支払額がある場合は全額を控除します。 |
社会保険料
|
/ |
給与などから徴収した社会保険料は全額を控除します。 |
手順4
… 年税額の計算
「(給与所得額-所得控除額=課税給与所得金額)×税率-税額の調整額-
税額控除額 =年税額」
ですが次の計算式に従います。
課税給与所得金額(A) |
税 率 |
調整額 |
税 額 |
|
1,950,000円以下
|
5% |
/ |
(A)×
5% |
1,950,000円超 |
3,300,000円以下
|
10% |
97,500円 |
(A)×10%-97,500円 |
3,300,000円超 |
6,950,000円以下
|
20% |
427,500円 |
(A)×20%-427,500円 |
6,950,000円超 |
9,000,000円以下 |
23% |
636,000円 |
(A)×23%-636,000円 |
9,000,000円超 |
18,000,000円以下 |
33% |
1,536,000円 |
(A)×33%-1,536,000円 |
18,000,000円超 |
18,050,000円以下 |
40% |
2,796,000円 |
(A)×40%-2,796,000円 |
課税給与所得金額が18,050,000円を超える人(課税給与等の総額が2千万円を超える人)は年末調整の対象とはなりません(確定申告が必要です)。
税額から控除する額(減税額など)がなければ、以上の計算で年税額が確定します。「調整額」の意味が少し分かりにくいかも知れませんので、図解しておきます。
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課税給与所得金額が195万円のとき、税額は97,500円です。
196万円に税率を掛けると196,000円になります。調整額を引かないと、いきなり98,500円の増額になってしまいます。
税額を不連続にするわけにはいきませんから、税率の境目を基準にして調整額が設けられています。 |
税額控除のうち主なものは「住宅借入金(取得)控除」で、「住宅借入金(取得)控除」は従業員から「給与所得者の住宅借入金(取得)等特別控除申告書」の提出があった場合に、上の計算式で求めた年税額から控除します。
令和6年は「定額減税」が実施されましたので、定額減税の対象者1人につき所得税3万円(住民税は1万円)が控除されます。
定額減税の対象者は
本人 |
合計所得金額が
1,805万円 以下 |
控除額は各3万円 |
配偶者 |
合計所得金額が
48万円 以下 |
扶養親族 |
合計所得金額が
48万円 以下の扶養親族で、扶養控除の対象でない年少扶養親族を含みます |
控除額は対象者数
× 3万円 |
手順5
… 過不足額の調整と源泉徴収票・給与支払報告書の作成
年税額が確定すると、最後に徴収済みの税額との差額を計算します。徴収済税額>年税額の場合は差額を還付します。逆に徴収済税額<年税額の場合は差額を追加徴収します。
本人交付用及び税務署提出用が「源泉徴収票」、市区町村提出用が「給与支払報告書」で、記載項目に若干の違いがあります。市区町村では、提出を受けた給与支払報告書をもとにして、翌年度の住民税徴収額を決定します。
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