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基   礎        講  座    (2)

決 算 整 理 事 項

■ 法人でも個人でも決算の基本は同じです

個人事業であれ法人であれ継続して事業を営む場合は、会計年度(個人の場合は暦年)を定めてその期間の損益を計算・確定し、期間終了時点の資産・負債(財務)状況を明らかにします。

この作業をご存知の通り 「決算」 と言いますが、次の2つの部分から成ります。

年度内の記帳は正しいか、記帳漏れはないかを精査・検討して年度内の(簿記上の)取引を確定します。

期間損益を導き出す(その結果として会計期間終了時点の資産・負債を確定する)ための修正作業をする。

1.記帳は正しいか、記帳漏れはないか
  内容・金額が不明のものはないか

会計期間中の取引について、その内容は全て判明していなければなりません。内容が不明、或いは金額が不明では正しい処理はできません。

法人税では「使途不明金」の特別課税制度があります。支払先・その内容を明かさないものについては、別個に課税するもので、税額は使途不明金の額の40%です。

仮払金・仮受金など 「仮」の付く科目

仮払金・仮受金などで処理しているのものは、期末現在で確定していれば本来の科目で処理します。

2.決算に当たっての修正(決算整理)作業

棚卸の実施

期間の売上収益に対応する売上原価は「期首棚卸額+期中仕入額−期末棚卸額」ですから、実地棚卸であれ帳簿棚卸であれ棚卸をしないと売上原価が確定しません。

収益のうち期間(当期)に対応しない部分は除外します。

長期契約でサービス(役務)の提供をする場合等で、数ケ月分又は1年分の対価を受けているときは、未経過分は当期の収益からは除きます。

   売上(収益)  1,500,000      前受収益  1,500,000

建設業等の長期請負工事は次のいずれかで処理します。

●工事完成基準

工事の完成引渡し時の収益に計上します。

●工事進行基準

決算期末に工事進行程度を見積り、適正な工事収益率によって工事収益の一部を当期の収益に計上します。

ただし、税法上は工事期間と請負金額によって、工事進行基準による収益計上しか認められない場合と、両者の選択が可能な場合に分かれます。

経費も期間の売上収益に対応させます。

 

ただし、少額の経費や毎月ほぼ同額の経費等で大勢に影響のないものは、毎期の継続適用を条件に、この処理をしなくてもかまいません(重要性の原則)。

前払費用

 

地代・家賃等は通常月末までに翌月分を払いますから、1ケ月分が前払費用(前払家賃)」になります。

   前払費用   245,000    家賃     245,000

未払費用

水道光熱費・電話代等は翌月払いですから、最終月分は「未払費用(未払光熱費等)」になります。

   水道光熱費  178,000    未払費用  178,000

 ●前払費用、未払費用に計上したものは翌期には逆の処理が必要です。

家賃

245,000

前払費用

245,000

⇒前期の前払い分を当期分に修正します

未払費用

178,000

現金・預金

178,000

⇒支払時の費用にはなりません

一括払い経費の未経過部分

損害保険料のように1年分の経費を前払いするものは、未経過部分を当期の経費から除外します。

   未経過保険料  85,000   損害保険料 85,000

翌期には逆の処理が必要です。

人件費

給与計算期間が21日〜20日であれば、決算月の21日〜月末までの人件費の処理が必要になります。

引当金

(費用・損失の見積り)

貸倒引当金 … 売掛債権の全てが回収できるとは限りません。取引先の倒産などによって回収不能になるかもしれない部分を予め予測して引き当てておきます(当期の取引にかかる部分ですから、当期の費用にします)。

貸倒引当金については翌期の処理が必要です。

前期に繰入れた引当金を当期は収益に戻し、当期の繰入額を費用にする

前期繰入額<当期繰入額の場合は差額を費用に、前期繰入額>当期繰入額の場合は差額を収益で処理する。

法人

賞与引当金・退職給与引当金など税務上では認められない引当金も、会計上必要であれば繰り入れます。

賞与引当金については翌期の賞与支払時に、退職給与引当金については退職金の支払時に該当者分の引当額を取崩さなければなりません。

個人

税務上では認められない引当金を繰り入れても、必要経費になりません。決算時に修正(反対)仕訳をして、取り消しておきます。

減価償却額(費)の確定

●10万円以上の減価償却資産は、通常の償却を選択するか一括償却(20万円未満の資産は、種類・耐用年数・使用期間に関係なく3年均等100%償却)にするか決めます。

●中小法人及び個人事業者 (ただし、従業員数1,000以下) が取得した30万円未満の減価償却資産は、その取得価額の全額を取得年度の経費にすることができます。年間で300万円が上限になっています。

有価証券の評価

売買目的で所有している有価証券は、帳簿価格(価額)と時価との差額を処理します。時価>簿価の場合は評価益、 時価<簿価の場合は評価損を計上します。

 

以上の処理が終了しましたら今期の損益を確定して、損益計算書・貸借対照表等の決算書類を作成します。

〔補足〕消費税の処理

以下の文中 「中間申告額」 は、年3回以上の分納をしている場合は、「期別納付額」と読み替えてください。

税込経理

 

中間申告額は当期の経費です。

 

確定申告額は、未払計上した場合は当期の、未払計上せず納付時の経費とした場合は、翌期の経費になります。

◆決算時に当期の消費税を確定して、確定申告額を未払計上する場合。

中間申告額を納付時に経費にしている場合。

■確定申告額は当期の経費にします。

   租税公課  *****  未払金    *****

■確定申告額の納付時

   未払金    *****     現金・預金  *****

中間申告額を納付時に「仮払金」で処理している場合。

■当期の年税額を当期の経費にします。

   租税公課(年額)  *****  未払金    ****

                  仮払金         ****

■確定申告額の納付時

   未払金    *****     現金・預金  *****   

◆確定申告額を未払計上せず、納付時に経費にする場合。

決算に当たって調整する必要はありません。

税抜経理

〔事例〕

■消費税の中間申告額                

■仮払消費税の合計額          

■仮受(預り)消費税の合計額 

\442,500 ⇒ 「仮払金」で処理 

\ 3,245,000

\ 4,102,000

仮払消費税、仮受(預り)消費税はこのままにしておくことも、確定申告額を「未払消費税」に振替えることもできます。

◆振替える場合は

  仮受(預り)消費税   4,102,000    仮払消費税          3,245,000 

                       仮払金        442,500

                       未払消費税      414,500 

 翌期に確定申告分を納付した時点で

  未払消費税        414,500              現金・預金             414,500 

◆振替えない場合は、翌期に確定申告分を納付するときまで「仮払金」「仮払消費税」「仮受(預り)消費税」が残ります。この際、前期繰越し分の「仮払消費税」「仮受(預り)消費税」を消すことに注意してください。

 仮受(預り)消費税   4,102,000    仮払消費税           3,245,000 

                      仮払金          442,500

                      現金・預金        414,500 

なお、帳簿上の「仮受(預り)消費税」と「仮払消費税」の差額と、実際の確定申告額との間に差額(端数処理等で差額が生じます)が生じた場合は「雑益」等で処理します。

■ 法人と個人では、次の点は全く異なります。

法    人

個     人

会計期間

(銀行業等を除き)自ら定めた期間です。また、会計期間は1年間だけでなく6ケ月とすることもできます。

暦年(1月〜12月)でこれは法定事項です。

減価償却

減価償却費に計上した金額のうち、法令基準で計算した金額(限度額)までの金額が経費(税法用語では損金)になります。

定められた償却方法・耐用年数で計算した金額が必要経費(減価償却費)になります。

資本金/元入金

資本金(出資金) ⇒

法定の手続きを踏んで確定した金額

 

元入金

 ・期首現在 = 資産総額−負債総額
 ・期末現在 = 資産総額−負債総額−事業所得金額
事業用の資金・資産を準備するための元手の意味合いはありますが、法人の資本金(出資金)のように法定の手続きを踏んで確定した金額ではありません。あくまで貸借対照表の差額です。

役員/事業主

法人とその役員は別個のものですから、法人の経理には店主貸・店主借、自家消費に該当するものはありませんが、法人の場合は会社と役員との間の取引に注意が必要です。

 

詳しくは 役員に関する税務と経理 を参照してください。

事業収入の一部を生活費に充てたり、逆に事業資金を追加したりする場合は、店主貸・店主借(事業主貸・事業主借)で処理します。

 

店主貸=引出金、店主借=元入金としてもOK。分かりやすい科目名を使ってください。

 

法人税・法人住民税

/所得税・住民税

会社の計算(決算)では費用にします(ただし、税務上は損金=経費になりません)。 

個人の所得から支払うもので、必要経費にはなりません。

なお、事業税は経費になります。

 

 


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