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【決算と法人税・住民税】


〔1〕 当期利益金額と法人税・住民税

法人の利益計算は最終的に「損益計算書」に表示されます。

                                損 益 計 算 書

                                                   (自 年 月 日〜至 年 月 日) 

 売上高                                 1,564,250,954

 売上原価                              1,205,125,658

  売上総利益                                                    359,125,296

 販売費及び一般管理費                                         230,254,015

  営業利益                               (以下金額略)

 営業外収益                              

 営業外費用                          

  経常利益                          

   特別利益                         

   特別損失                           

   税引前当期利益                      

   法人税・住民税・事業税                     

   当期利益                          

 

「当期利益」は、まず売上高から売上原価を差し引き、次に費用及び損失を差し引いて求めます。

収益から差し引く金額は

  ・当期の売上高に対応する売上原価

  ・当期以前に確定した費用(損失)のうち、当期に負担すべき費用(損失)

で、これらの金額は一般に公正妥当な会計慣行に従って確定されます。

最後の3行 のうちに記載される「法人税・住民税・事業税」も、当然ながら当期に負担すべき「法人税・住民税・事業税」の額です。

〔2〕 中間申告と確定申告

法人税・住民税については、前事業年度の税額が一定額を超える場合は中間申告をしなければなりません。

 @予定申告=前事業年度の税額÷前事業年度の月数 × 6(ケ月)

 A仮決算による中間申告

のいずれかの方法で申告します。

前年度に較べて当期の業績が悪化あるいは赤字が予想される場合は、仮決算をして中間申告をしないと税金の納めすぎになる場合があります(納め過ぎの中間申告税額は確定申告によって還付されます)。

中間申告はいずれの方法にせよ、税金の仮払いですから確定申告によって精算されます。

損益計算書に記載される「法人税・住民税・事業税」は、当期に負担すべき法人税・住民税・事業税の年額です。中間申告額は決算時点でその金額が判明していますが、確定申告額は何らかの方法で見積り計算した金額です。経理処理でいえば、未払計上した金額です。

他方、貸借対照表に記載される「未払法人税等」は確定申告分だけです。決算時点では中間申告額は支払済みですが、確定申告額は未払いだからです(中間申告額を滞納している場合は中間申告分も含まれます)。

 

貸   借   対   照   表

        

負債の部

   :

  未払法人税等          13,300,000

〔3〕 法人税と地方税

法人税は原則として事業年度終了の日の翌日から2ケ月以内に、申告書の提出と税金の納付をしなければなりません。住民税・事業税も同様です。

住民税は道府県民税と市町村民税の2種類ですが、東京特別区に事業所がある法人は、両者を併せた都民税を申告納付します。

  ●法人税 ⇒ 税務署

  ●事業税及び道府県民税 ⇒ 道府県税事務所

  ●市町村民税 ⇒ 市町村

住民税・事業税は法人税額の計算をもとにして税額を計算します。

  ●事  業  税 = 所得の金額(一部の事業に対しては収入金額 )

  ●道府県民税及び市町村民税 =( 法人税額 ⇒ 法人税割、及び法人の規模 ⇒ 均等割 )

@事業税の課税対象額は法人税の課税対象額に数項目の調整をして求めます。

A住民税の法人税割は法人税額に数項目の調整をして求めます。

いずれも、法人税の計算がもとになります。

法人税申告書作成の最終段階で当期の確定税額(法人税及び住民税)を法人税申告書の別表5(1)と別表5(2)に記載します。地方税の計算が終わらないと法人税申告書の作成も終了しません。

なお、「別表」とは法人税申告書の計算表の呼称です。法人税の申告書は1枚の計算表ではなく、別表と呼ばれる多数の計算表で構成されています。

また、課税対象のことを税法では「課税標準」といいますが、本講座では区分せずに両者を使用しています。

〔4〕 各事業年度の所得に対する法人税

法人税は「各事業年度の所得の金額」に対して課される税金です(その他にも課税されますが、ここではとり上げません)。

●法人税法21条 ⇒ 内国法人に対して課する各事業年度の所得に対する法人税の課税標準は、各事業年度の所得の金額とする。

●法人税法22条@ ⇒ 内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。

と法人税法に規定されています。

益金の額、損金の額については22条のA、Bに規定されていますが、概ね

●益金の額=収益の額

●損金の額=原価+費用+損失の額

と理解しておけばよいでしょう。23条以降は「益金の額の計算」「損金の額の計算」と続きますが、通常の企業会計の計算原則と異なる計算方法が規定されています。

項   目

会社経理

法人税法

租税公課

受取配当金

所得税

引当金

減価償却費

寄附金

交際費

繰越欠損金

費用

収益

費用

費用

費用

費用

費用

当期の損益とは無関係

法人税・住民税の本税は損金不算入

一定額は益金不算入とすることができる

損金とすることもできるが、損金とすぜに税額控除することもできる

特定の引当金について、一定限度額以内の金額を損金とする

一定限度額以内の金額を損金とする

同上

同上

青色欠損金は、平成20年4月1日以後終了年度の欠損金は9年間、平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生じた欠損金は10年間次年度へ繰り越して所得金額から控除する

従って「当期利益」と「各事業年度の所得の金額」は、通常は一致しません。

法人税額は課税対象である「各事業年度の所得の金額」に一定の税率を掛けて算出しますが、税額控除の制度と追加課税の制度がありますから、これらに該当する金額がある場合は更に減算・加算をします。単純に税引前の「当期利益」金額に税率を掛けた金額とは更に乖離することになります。

〔5〕 決算と法人税額等の未払計上

一般的な決算手順を教科書風に整理すると、次のようになります。

   試算表の作成

   精算表の作成

    ・試算表の勘定残高を転記する

    ・決算整理事項の処理と当期損益の算出

   元帳の締処理

   財務諸表の作成

さて、当期の法人税等はどの段階で計上するのでしょうか。中間申告額は既に判明していますから問題はありませんが、確定申告額は決算整理の段階で適正に見積って未払計上しなければなりません。

では、当期の法人税等の確定申告額を適正に見積るにはどうすればよいでしょうか。法人税・事業税は基本税率が一定で、住民税も法人税額に一定の率を掛けた金額+均等割額ですから

  税引前当期利益金額×(法人税等の税率)+住民税均等割額=年税額

  確定申告額=年税額−中間申告額

の計算で見積ることができそうです。

概算であればこれも一つの方法ですが、既にお話した通り法人税の課税対象は税引前当期利益金額ではなく、「当期の所得金額」です。何らかの方法で法人税法に規定する「当期の所得金額」を見積り、これに税率を掛けて税額を算定し、この見積額を未払計上して決算を終了します。

では何らかの方法とは? … 残念ながら今すぐに解答を出すことはできません。この疑問に対する解答は実はこの講座の結論にあたります。この話の続きが最後のほうに出てきますから、それまで記憶の片隅に留めておいてください。

〔補足〕

税引前当期利益金額から差し引く「法人税・住人税・事業税」は、当期の「中間申告額」+「確定申告額(未払計上額)」です。これが正しい(適切な)処理方法ですが、当期の納付額(前期確定額+当期中間額)で代用すれば税務の知識がなくても決算を完了させることができます (小規模法人の場合は、未払計上しない場合が多いようです)。

なお、税込経理の場合の消費税については、法人税法の損金算入時期は法人の経理通りですから、法人税・住民税、事業税の計算に先立って処理しておけば問題はありません。税抜経理の場合は損益に無関係ですから、当然ながら未払計上するか否かは問題になりません。


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