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【解散と清算の基礎知識】


会社は解散の特別決議が議決されると清算会社に移行します。解散 = 会社の消滅ではなく、清算事務の完了と清算結了登記によって消滅します。

■ 解散決議

解散を議決には 特別決議 が必要です。 特別決議は議決権の過半数を有する株主が出席し、かつ議決権の2/3以上の多数で決する決議ですが、定款で別途特別決議の要件を定めている場合は、その規定に従います。

株主への総会召集通知、議事録等については通常の株主総会と同様の手順です。従って「書面決議」によっても解散決議は可能です。株主が極少数の小規模な会社では、書面決議にすれば手続きが簡略になります ( この場合も、議事録は必要です )。

解散の日は、「○年○月○日に解散する」とした場合はその日で、解散日を明示していない場合は解散決議の議決日です。

■ 清算人、監査役と定款

会社が解散して清算会社になると事業活動はできず、後は会社を消滅させるための残務整理=清算事務だけを行います。従って、解散時には取締役は(不要のため)退任し、代わって清算人を選任します。

清算会社の機関は、株主総会と清算人以外は任意です。解散前に取締役会、監査人(監査役会)等を設置していた場合でもこれを廃止することができますから、小規模な会社で名目だけの取締役会や監査人を置いていた場合は、廃止する(取締役会に代わる清算人会は置かない )方が清算事務が簡略化できます。

清算人は解散前の取締役の立場とほぼ同様で

● 会社との関係は委任契約で善管注意義務を負います。

● 清算会社を代表します。清算人が複数の場合は、各自が代表となるか代表清算人を置くこともできます。

● ただし任期は法定されておらず、清算結了まで。

通常は取締役がそのまま清算人に 就任 しますが、それ以外に、定款で定める者・株主総会の決議によって選任 された者にすることもできます。

定款の変更項目は

● 会社の機関 … 前述したように、できるだけ簡素化したほうが清算事務も簡略化できます。

● 清算事務年度(事業年度) … 解散の日の翌日から1年になります。従って株主総会の開催日も変更されます。

● その他 … 清算会社の内容に合致するよう変更が必要です。

解散決議をして清算人を選任すると、会社は清算の目的の範囲内で存続するものと看なされます(会社法第476条)。また、定款も変更したものと看なされるので、定款の変更をしないで済ますのが一般的です。

■ 解散時の財産目録、貸借対照表

清算人は解散時の財産目録を作成し、これを基にして清算会社の(開始)貸借対照表を作成します ( 会社法 ) 。

財産目録に付すべき資産等の価額は帳簿価額ではなく処分価額で

● 処分不能の無形資産や繰延資産は「0」

● 解散事業年度の確定税額は未払金に計上

します。

財産目録を及び貸借対照表は、株主総会の承認を得なければなりません。

■ 解散時の登記と各種届 

解散の日から2週間以内に「解散の登記」と「清算人の選任の登記」をしなければなりません。申請者は清算人です。

登記申請書 … 申請者が同一なので、同一の登記申請書でよい ( 2件まとめて記載してもよい )

● 定款 1通

● 株主総会議事録 1通

● 清算人の印鑑証明書 … 清算人(個人)の印鑑証明書を添付

● 委任状 … 代理人によって申請する場合

● 清算人が就任を承諾したことを証する書面 。ただし、次の場合は不要です。

  ◆ 取締役が清算人に就任する場合 ( 法務局 「会社を解散し、清算人を選任する場合の申請書の様式・記載例 」 情報番号2223 )

  ◆ 取締役以外が清算人に就任する場合で、株主総会議事録に就任を承諾する旨記載されている場合

● 印鑑届書 … 清算会社の代表者印を届出ます。印鑑カードについては、前任者(旧代表取締役) の印鑑カードの引継ぎができます。

【 補足 】

特例有限会社の場合

定款添付の要・不要

特例有限会社で、取締役が清算人に就任した場合又は定款に清算人が定められている場合は、定款を添付する必要がありますが、株主総会の決議によって選任された者が清算人となる場合は、定款の添付は不要です (東京法務局 )。

清算人の就任と選任

取締役が清算人になる場合は「就任」、取締役以外が清算人になる場合は「選任」です。登記申請書の登記事項の記載に当たっては、就任と選任を区別する必要があります。

申請書の雛形

「会社解散・清算人登記申請書の雛形」 などで検索してください。

登録免許税

「解散の登記」と「清算人の選任の登記」を合せて ¥39,000です。  

登記簿謄本(全部事項証明書)は、税務官庁への異動届出書(又は法人の設立・異動届出書、法人等設立・解散・変更届出書)や社会保険の届に添付する必要があります。必要部数を準備してください。

● 税務署用  ● 都道府県税事務所用  ● 市町村用

異動届出書の記載事項は、解散及び清算人、異動前後の事業年度等です。

● 社会保険事務所用  ● 労働局又は労働基準監督署用

 社会保険/労働保険の届

区 分

提 出 先

届  出  書

添 付 書 類

社会保険

年金事務所

健康保険・厚生年金保険適用全喪届

登記簿謄本又は雇用保険適用事業所廃止届のコピー

健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届

労働保険

公共職業安定所

雇用保険適用事業所廃止届

登記簿謄本(事業所の廃止の事実が確認できる書類)

雇用保険被保険者資格喪失届

 

離職証明書

賃金台帳等

労働局又は労働基準監督署

(金融機関経由可能)

労働保険確定保険料申告書

 

労働保険料還付請求書

 

■ 債権申出の広告など

帳簿等で判明している債権者には、個別に債権の申出を催告するとともに、官報に「解散広告」を出さなければなりません。この広告期間は2ケ月を下回ることができません。また、この期間が終わらないと残余財産の分配はできません 。なお、官報広告は法定事項のため債権者がいない場合でも出さなければなりません。

広告費用は約 ¥30,000です。  

■ 解散と税務申告

事業年度の開始日から解散の日までを事業年度とみなし、解散の日の翌日から2ケ月以内に解散確定申告書の提出が必要です。

● 法人税

● 事業税及び道府県民税

● 市町村民税

通常の確定申告用紙を使用しますが、計算月数が「12」でない場合は按分計算が必要な外、減価償却額の計算は改定償却率で行います。

■ 清算事務、残余財産の確定と税務申告

清算人の仕事は資産の売却と債務の弁済でこれを「清算事務」といい、清算事務が1年を超える場合は、1年を区切りにして清算事務年度を順次繰越します。清算事務年度が終了すると、決算及び株主総会の開催が必要です。また、税務申告も必要ですが、小規模な会社で清算事務年度を繰越すことはまずないでしょうから、説明は省きます。

債務の弁済が完了すると、株主へ分配する残余財産が確定します(残余財産がない場合は分配=0)。従って、残余財産の確定日=債務弁済の完了日です。清算年度では、解散の日の翌日から債務弁済の完了日までが、(みなし)事業年度になります。法人税及び地方税の申告書に 「残余財産の最後の分配又は引渡しの日」 の記載欄が設けられている所以です。

■ 清算結了の登記と税務申告

残余財産が確定し、株主への分配が可能となれば清算を結了するため、決算報告書を作成し株主総会を開きます。

株主総会で決算報告が承認されると会社は消滅しますので、決算報告承認から2週間以内に清算結了の登記を行います。

● 登記申請書 … 申請者は清算人

● 株主総会議事録 1通

● 委任状 … 代理人によって申請する場合

● 清算人が印鑑カードの交付を受けている場合は返納

登記簿謄本(閉鎖事項証明書)は、税務官庁への異動届けに添付する必要があります。必要部数を準備してください。

● 税務署用

● 都道府県税事務所用

● 市町村用

清算結了の登記後は、登記簿謄本を添付した異動届出書(又は法人の設立・異動届出書、法人等設立・解散・変更届出書)の提出も必要です。

異動届出書の記載事項は、残余財産の確定と確定日、清算結了と結了日等です。

残余財産の確定日の翌日から1ケ月以内に(清算)確定申告書を提出し、消費税に関しては「事業廃止届出書」を提出します。なお、(最終)清算年度の終了日は残余財産の確定日です。

解散から清算結了までのタイムスケジュール

株主総会 = 解散決議と清算人の選任、(必要であれば)定款の変更

株主総会開催

日に解散すれ

ば短縮される

 

解散 = 業務終了・清算事務開始

2週間以内

登記 = 解散及び清算人の登記

解散確定申告

は解散日の翌

日から2ケ月

以内

株主総会 = 財産目録及び貸借対照表の承認

 

債権申出広告 = 官報広告と判明債権者への個別通知

債権申出期間

は2ケ月以上

異動届出書、社会保険/労働保険の届の提出 ( いずれも遅滞なく )

解散確定申告書の提出

債権申出期間の満了

 

(注)幾つかの項目は都合により前後しても構いません     

残余財産の確定

確定申告書の

提出は残余財

産確定日の翌

日から1ケ月

以内 (※)

 

 

株主総会 = 決算書(残余財産の確定・分配)の承認 = 清算結了

 

清算結了の登記

異動届の提出は

清算結了の登記

後遅滞なく

異動届出書の提出

清算確定申告書の提出

 

小規模な会社でも3ケ月ほどかかります。

(※)但し、1ヶ月以内に残余財産の最後の分配が行われる場合は、その最終分配日の前日まで

消滅会社の資料保存

清算人は清算結了時から10年間、清算会社の帳簿及び清算に関する重要書類を保存しなければなりません。清算人以外が保存する場合は、裁判所に保存者の選任の申立てをします。


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