給与・賞与の源泉徴収事務は、大きく分けると2つになります。1つは毎月の給与、年に数回の賞与支給時に所得税を計算して徴収・納付する事務、もう一つは年末調整です。
ここでは、前者のみを説明します。また、住民税の特別徴収・退職者等の住民税の徴収についても付記しておきます。
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◆給与の源泉徴収
◆賞与の源泉徴収 ◆徴収した源泉所得税の納付
◆住民税特別徴収 ◆退職者等の住民税の取り扱い
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給与の源泉徴収
■
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
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その年の初めの給与計算時までに、従業員全員から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらいます。また、中途就職者には、入社後初めの給与計算時までに提出してもらいます。この申告書によって、給与から徴収する所得税を算定する際の「扶養親族等の数」を確定します。また、通常は「主たる給与を受ける」の欄に該当項目を記載してもらいます。
●平成23年分以降の申告書
( 平成23年1月から使用 します。平成28年分からは個人番号の記載欄が増えています。 )
主たる給与から控除を受ける |
区 分 |
氏 名
個
人 番 号 |
続柄 |
生年月日 |
老人 |
特定 |
住所又は居所 |
年間所得の見積額 |
異動月日
及び事由 |
控除対象
配偶者 |
|
/ |
1 |
|
/ |
1 |
1 |
1 |
扶養親族 |
1 鈴木 △△ |
親 |
昭
15・ 5・18 |
同居・他 |
|
1 |
0 |
1 |
2 鈴木 □□ |
子 |
平
4・
8・ 5 |
同居・他 |
1○ |
1 |
0 |
1 |
3 |
|
|
同居・他 |
1 |
111 |
|
1 |
4 |
1 |
2 |
同居・他 |
1 |
1 |
112 |
1211 |
5 |
1 |
2 |
同居・他 |
1 |
1 |
1211 |
11121 |
障害者等 |
障 害 者 等 の 事 実 |
左 記 の 内 容 |
1 |
1 障害者 |
2 寡 婦
3 特別の寡婦
4 寡 夫
5 勤労学生 |
|
1
1 |
1 |
本人 |
配偶者 |
扶養親族 |
一般 |
2 |
2 |
31 |
特別 |
2 |
3 |
3 |
同居特別 |
/ |
2 |
1 |
他の所得者が控除を受ける扶養親族等 |
氏 名 |
続柄 |
生年月日 |
住所又は居所 |
異動月日
及び事由 |
控除を受ける他の所得者 |
氏 名 |
続柄 |
住所又は居所 |
|
|
|
* |
|
|
|
|
|
|
|
* |
|
|
|
|
* |
○住民税に関する事項
16歳未満の
扶養親族 |
氏 名 |
個
人 番 号 |
続柄 |
生年月日 |
住所又は居所 |
年間所得の見積額 |
異動月日及び事由 |
鈴木 ×× |
|
子 |
平
11・ 2・12 |
|
0 |
|
* |
|
|
|
|
|
|
* |
|
|
|
|
|
|
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平成23年1月から、所得税では「16歳未満の扶養親族に対する控除」が廃止されましたが、住民税では廃止されませんので、16歳未満の扶養親族がある場合は下段の該当欄に記載
します。
扶 養 親 族 等 の 数 の 判 定 |
控除対象配偶者 |
1名 |
扶養親族 |
記載されている人数 |
障害者 |
該当者数 |
障害者等の2から5まで |
該当項目1つにつき1名 |
上の鈴木太郎さんの場合は、扶養親族等の数は「3」になります。扶養親族は2名ですが、障害者に該当する人がいるので1名加算されて3名になります。
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の右上に「従たる給与についての扶養控除等申告書の提出」欄があります。2か所以上から給与を受けている人で、主な勤務先からだけでは扶養控除などの全額を控除できない場合は、「従たる給与についての扶養控除等申告書」を提出することができます。
〔例:Bさんの場合〕
勤務先 |
所定給与額 |
社会保険料控除額 |
扶養親族等 |
申告する扶養親族数 |
徴収税額 |
備 考 |
X社 |
190,000 |
32,500 |
3名 |
2名 |
0 |
甲欄適用 |
Y社 |
125,000 |
0 |
1名 |
3,490 |
乙欄適用 |
Bさんの場合X社に2名申告しても、3名申告しても徴収税額は「0」です。Y社に対しては、申告しない場合の徴収税額は
5,100円ですが、1名申告すると 3,490円になります。
なお、年の中途に扶養親族等に変動(異動)
…
出生による増加、死亡による減少などがあった場合は、「異動」欄に追加記入し、以後の税額計算は異動後の内容に従います。
■
源泉徴収税額表
毎月の給与支給額から控除する所得税額は、源泉徴収税額表の「月額表」に当てはめて算出します。コンピュータで計算する場合は自動的に税額が計算されますが、算出の仕組みは(端数処理の違いを除いて)全く同じです。
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出の有無によって、当てはめる欄が異なります。
申告書の提出あり |
甲欄 |
申告書の提出なし |
乙欄 |
従で提出あり |
月額表(平成29年1月以降)
その月の社会保険料控除後の給与等の金額 |
甲 |
乙 |
扶 養 親 族 等 の 数 |
|
0人 |
1人 |
2人 |
3人 |
… |
|
以上 |
未満 |
税 額 |
税 額 |
: |
: |
|
|
|
|
|
|
386,000 |
389,000 |
15,530 |
12,290 |
9,060 |
7,070 |
… |
78,800 |
389,000 |
392,000 |
15,770 |
12,540 |
9,300 |
7,190 |
… |
80,600 |
: |
: |
|
|
|
|
|
|
「その月の社会保険料控除後の給与等の金額」と「扶養親族等の数」が交差する欄が、求める税額です。
なお、次の点に注意してください。
● |
「その月の社会保険料控除後の給与等の金額」は、通勤手当などの非課税額は除いた金額です。 |
● |
乙欄適用者のうち、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出のない人は、右端に記載されている金額が求める税額ですが、「従」の申告書を提出している人の場合は、右端の金額から扶養親族1名につき
1,610円を差引いた金額が求める税額になります。 |
〔補足
… 財務省告示別表第1表〜第3表〕
|
「電子計算機等を使用して源泉徴収税額を計算する方法を定める告示」が、第1〜第3表として税務署配布の源泉徴収税額表の最後のページに記載されています。
この計算式で計算すると、税額表に当てはめた場合の税額と若干の差額が生じます(10円〜20円)。どちらも正しいとも言えますが、どちらも正しくないとも言えます。毎月の給与から徴収する所得税額は仮の税額で、年末調整(又は確定申告)で精算される仕組みになっているからです。
興味のある方は、年末調整の仕組みを参照してください。 |
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賞与の源泉徴収
1.通常の場合
賞与から徴収する所得税額は、「(賞与支給額−社会保険料)×税率」で求めますが、税率は「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」から探し出します。給与の場合と同様に、甲欄適用者と乙欄適用者では税率が異なります。
(平成29年1月以降)
賞与の金額に乗ずべき率
% |
甲 |
乙 |
扶 養 親 族 等 の 数 |
0 人 |
1 人 |
2 人 |
… |
前
月 の 社 会 保 険 料 控 除 後 の 給 与 等 の 金
額 |
同左 |
以上 |
未満 |
以上 |
未満 |
以上 |
未満 |
1 |
以上 |
未満 |
: |
: |
: |
|
|
1 |
1 |
1 |
1 |
1 |
8.168 |
300 |
334 |
338 |
365 |
369 |
393 |
… |
1 |
1 |
10.210 |
334 |
363 |
365 |
394 |
393 |
420 |
… |
239千円未満 |
12.252 |
363 |
395 |
394 |
422 |
420 |
450 |
… |
1 |
1 |
: |
1 |
1 |
1 |
1 |
1 |
1 |
1 |
1 |
1 |
(金額の単位は千円です)
■ |
甲欄適用者の場合
今回の賞与支給額ではなく「前月の社会保険料控除後の給与等の金額(通勤手当などの非課税額は含みません)」と、扶養親族数が交差する部分の左端が、賞与に対する税率になります。 |
■ |
乙欄適用者の場合
扶養親族数は一切関係なく、次の税率になります(金額の単位:千円)。
以 上 |
未 満 |
税 率 |
|
239 |
10.210
% |
239 |
296 |
20.420
% |
296 |
528 |
30.630
% |
528 |
1,135 |
38.798
% |
1,135 |
|
45.945
% |
|
通常の場合は(賞与支給額−社会保険料)×税率(上で求めた税率)で、賞与から徴収する所得税額を算出します。
なお、給与に対する源泉所得税は10円未満が切捨てになっていますが、賞与の場合は1円未満切捨てです。
2.例外
前月の給与等の金額がない場合 |
例外−1
|
前月の給与等の金額<前月の社会保険料の金額 |
(今回の賞与支給額−社会保険料)>前月の社会保険料控除後の給与等の金額×10 |
例外−2
|
以上に該当する場合は「税率表」を使用せず、次の手順で税額を計算します。
〔例外−1〕の場合
@ |
(賞与支給額−社会保険料)
÷ 6 ( この金額を A とします ) |
A |
Aを月額表(甲・乙欄のいずれか)に当てはめ対応する税額を求めます
(この金額をBとします) |
B |
B
× 6 が求める税額です |
〔例外−2〕の場合
@ |
(賞与支給額−社会保険料)
÷ 6 ( この金額を A とします ) |
例外−2は「前月の社会保険料控除後の給与等の金額」を「0」にすると、例外−1と同じです。 |
A |
A+「前月の社会保険料控除後の給与等の金額」
(この金額をBとします) |
B |
Aを月額表(甲・乙欄のいずれか)に当てはめ対応する税額を求めます
(この金額をCとします) |
C |
「前月の社会保険料控除後の給与等の金額」に対応する税額を税額表から算定します
(この金額をDとします) |
D |
(C−D)×
6 が求める税額です |
(注)賞与の計算期間が6ケ月を超える場合は、上記の
「÷ 6」「× 6」 を 「÷ 12」「×12」
とします。
税務署配布の源泉徴収簿の裏面右上は、例外の場合の計算欄になっています。 |
徴収した源泉所得税の納付
徴収した所得税は「所得税徴収高計算書(納付書)」にその明細を記載し、給与・賞与の支給日の翌月10日までに納付します(銀行・郵便局などが取扱いの窓口になっています)。
常時使用する従業員が9人以下の場合は、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出すれば、年2回の納付で済みます。ただし、源泉所得税の滞納・延納があれば、この届出書を出しても期限の特例は認められません。
また納期特例の適用があるのは、「給与・賞与、退職手当、税理士等の報酬(通称マルキュウ)」に限られています。「料金・報酬(通称マルホウ)」「配当金(通称マルハイ)」等の源泉所得税には納期特例の制度はありません。
|
納期特例 |
1月〜6月分 |
7月10日 |
7月〜12月分 |
1月20日 |
源泉所得税の納付書にはいくつかの種類がありますが、給与・賞与については(給)と記された納付書を使用します。
通常の場合 |
通常の(給)納付書を使用します |
納期特例の適用を受けている場合 |
納期特例用の(給)納付書を使用します |
以下納期特例の場合の記載例(平成××年下期分)をあげておきます。
平成年度 |
|
|
整 理 番 号 |
|
× |
× |
|
区 分 |
支 払 年 月 日 |
人 員 |
支 給 額 |
税 額 |
|
納付の目的 |
俸給・給料等 |
××0725 |
〜 |
1225 |
38 |
11,561,538 |
693,600 |
平成 年 月 |
賞与(役員賞与を除く)
|
××0725 |
|
1205 |
5 |
1,045,200 |
80,300 |
自 |
×× |
0 7 |
|
|
|
|
|
|
|
至 |
×× |
1 2 |
退職手当等 |
|
〜 |
|
|
|
|
|
税理士等の報酬 |
|
〜 |
|
|
|
|
役員賞与 同上の支払確定日 |
××0725 |
〜 |
1205 |
1 |
800,000 |
66,000 |
××1030 |
|
年末調整による不足税額 |
8.300 |
住所(所在地) (電話)
氏名(名称)
|
年末調整による超過税額 |
53,600 |
本 税 |
794,600 |
延 滞 税 |
|
合 計 額 |
794,600 |
「平成年度」
⇒
会計年度(4月1日から3月31日まで)を記載します。
「人員」
⇒ 納期特例の場合は延べ人数を記載します。
「支給額」
⇒ 非課税額は含みません。
「納付の目的」
⇒ 下期の場合は○○年7月〜○○年12月です。
(注)
… |
この記載例の場合は下期ですから、年末調整の過不足税額欄も記載しています。 |
|
退職手当等・税理士等の報酬から徴収する源泉所得税も同じ納付書を使用します。「給与・賞与以外の源泉徴収事務」を参照してください。 |
住民税特別徴収
住民税は前年の所得税額の計算を基にして、市町村がその徴収額を決定します。事業所得者などの場合は所得税の確定申告によって、給与所得者の場合は事業主が提出する「給与支払報告書」によって課税対象額が明らかになるようになっています。 住民税の徴収期間は6月から翌年5月までです。これは事業所得者であっても、給与所得者であっても同じですが、給与所得者の場合は雇用主が毎月の給与支払時に徴収して、従業員各人の住所地の市町村に納付します。事業所得者などの場合は、自分で納税しますから普通徴収(年1回又は年3回)、給与所得者の場合は事業主が納税しますから特別徴収といいます。 特別徴収の場合は、市町村から5月末までに、雇用主へ従業員各人の徴収額の通知が送られてきます。この通知書には6月分の徴収額と7月以降分の徴収額が記載されています(年額が少ない場合は6月に全額を徴収することがあります)。毎月の特別徴収額は年額の12等分なのですが、端数を6月分に加算するため、6月分だけその他の月より徴収額が多くなります。給与計算の際には、この点に注意が必要です。 所得税と同様に、常時使用する従業員が9人以下の場合は、「特別徴収税額の納期の特例に関する申請書」を提出すれば、年2回の納付で済みます。
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納
期 限 |
6月分〜11月分 |
12月10日 |
12月分〜5月分 |
6月10日 |
■
退職者等の住民税の取り扱い
住民税は6月から新年度分の徴収が始まりますが、退職者・他の市町村への転勤者については未徴収額の処理が必要になります。
処理の方法は次の3つです。
● |
普通徴収(本人が直接納付する)に切り替える |
● |
残額を退職時・転勤時等に一括して徴収する |
● |
新しい勤務先(転勤先)が特別徴収事務を引き継ぐ |
未徴収額をどのように処理するかを「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」に記載して、市区町村に提出します。なお、退職・転勤等を異動といいます。
■一括徴収か普通徴収を選択する場合
1.その年の6月1日から12月31日までの異動の場合
本人から残額の一括徴収の申出があった場合 |
残額を全て徴収します |
本人から残額の一括徴収の申出がない場合 |
普通徴収に変更します |
2.翌年の1月1日から4月30日までの異動の場合
本人から申出の有無に関わらず |
残額を全て徴収します |
残税額を超える給与等の支払いがない場合 |
普通徴収に変更します |
〔補足〕5月に異動があった場合は、未徴収額はありません。
|
■その他の場合
新しい勤務先(転勤先)で特別徴収を希望する場合 |
新しい勤務先(転勤先)が徴収事務を引継ぎます |
死亡退職 |
普通徴収に変更します |
■異動届出書(抜粋)
退職者から一括徴収の申出がなく、普通徴収に切り替える場合の記載例です。なお、様式は市区町村に異なりますので、「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」で検索してください。
平成 ××年11月5日 提出 |
|
給
与
所
得
者 |
氏 名 |
鈴木 太郎 |
特別徴収税額 |
徴収済税額 |
未徴収税額 |
異動年月日 |
異動の事由 |
異動後の未徴収税額の徴収方法 |
1月1日以降退職時までの給与支払額 |
住
所 |
1月1日現在 |
○○市△△町 |
187,500 |
63,500 |
124,000 |
××
年
月 日
10 30 |
転 勤
○退 職
死 亡
休 職
長 欠
その他 |
特別徴収継続
一括徴収
○普通徴収
|
4,070,500 |
控除社会保険料額 |
異動後 |
同上 |
317,245 |
* |
納税者が新しい勤務先において「特別徴収の継続」を希望される場合は以下の項目にも記載してください。 |
新しい勤務先の名称及び所在地 |
所在地
名称 |
左記転勤先へは月割額 円を 月分から徴収するよう連絡済です。 |
給与等の支払を受けなくなった後の月割額(退職した月を除く)の一括徴収について次の欄に必ず記載してください。 |
一
括
徴
収 |
一括徴収する場合 |
徴収予定日 |
徴収予定額 |
徴収予定額合計 |
備 考 |
理
由 |
1.異動の日が6月1日から12月31日までの間で本人から申出があったため。
2..異動の日が1月1日から4月30日までの間で特別徴収の継続の希望がないため。 |
|
|
|
|
一括徴収しない場合 |
|
理
由
|
@異動の日が6月1日から12月31日までの間で本人から申出がないため。
2.特別徴収の継続の希望があるため。
3.異動の日が1月1日から4月30日までの間で残税額を超える給与等の支払いがないため。
4.死亡による退職のため。 |
|
|