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決算の話し

時は大航海時代、冒険家は出資者を募って資金を集め、船を建造し船乗りを集め、一攫千金を夢見て大海に乗り出したそうです。ある者は海に沈み、ある者は病死、又ある者は殺害され、無事金銀財宝を持ち帰った者はほんの一握りだったそうです。

それはさておき、無事帰還してもそれでハッピーエンドとは参りません。最後の仕事が残っています。金銀財宝を自分の取り分と、出資者に分けなければならないのです。どうやって分けるか … 各出資者の出資金額に応じて分配する、もちろん自分の取り分を差引いて … に決まっています。

 

さて、時代は流れ流れて産業革命の時代、1回完結型の事業はめっきり減り、継続企業が当たり前になってくると、どうやって出資者の取り分を計算したものか? が問題になってきますが、色々ありまして  … 現在に繋がる会計制度が出来上がってきたのであります。   ( ……… の一席、これにて  )


■ 会計期間

個人事業でも、会社(法人)でも会計期間を決めています。商法や税法で決めなければならないことになっています。会計期間は

個人事業

暦年(1月から12月の1年間)です。

会社(法人)

原則として任意の期間です。通常は1年間ですが、半年にすることもできます。また、月の途中から開始することもできます。

ただし、金融機関は4月~翌年3月です(国の会計期間に合わせなければならない)。

会計期間は何故必要か

事業の関係者(主に出資者、銀行等の資金提供者)に営業実績(損益内容)、資産内容の情報を一定期間ごとに提供しなければならない。情報提供がなければ、このまま出資を続けるか、資金提供を続けるかの判断ができません。

なお、意図的に間違った情報(悪い内容を良く見せる)を提供することを、「粉飾」と言います。

個人の場合は所得税を、会社の場合は法人税等の税金を払わなければなりません。一定期間の利益の計算を基に税額を計算します。

■ 期間損益

一定期間(会計年度)に得られた利益は、その間の (収益金額-売上原価-費用) です。  

収益金額

掛売等で売掛金の回収が次年度になる場合でも、今年度の収益です。逆に、前年度の掛売り分の入金があっても今年度の収益ではありません。

売上原価

今年度に販売した商品・製品が全て今年度に仕入れた商品・製造した製品ということは稀です。通常は前年度からの持越し分と、次年度への持越し分があります。

前年度からの持越し

今年度仕入(製造)     

A

B

次年度へ持越し

今年度に販売した商品・製品は、(A+B) の部分に当たります。

■今年度の販売分=前年度からの持越し+今年度仕入(製造)-次年度へ持越し

掛仕入等で支払が次年度になる場合でも、今年度の仕入です。逆に、前年度の掛仕入の支払があっても今年度の仕入ではありません。

持越し分は、商品・製品を数えて確定します。これを「棚卸」と言いますが、現物を数える場合が「実地棚卸」、商品・製品ごとの帳簿(受払帳)で残高を確定する場合が「帳簿棚卸」です。

費用

費用は原則として発生した時点で費用にします。費用の発生時期と支払時期が一致しない場合は、次のように処理します。

未払費用

今年中に発生した費用で、支払が済んでいない場合

電気・ガス・水道料、電話料などは、半月~1ケ月遅れで支払いますが、既に費用は発生していますから、今年度の費用にします。

前払費用

次年度分の費用を、今年中に支払を済ませた場合

家賃・ガレージ代などは通常月末に翌月分を支払います。最後の月の支払分は、次年度分の費用です。

※厳密に言えば未払費用、前払費用であっても、金額が小さく大勢に影響しないものは、未払費用、前払費用で処理しなくても構いません。

 

■仮払金など

費用はその内容(支払先、目的、金額)がはっきりしていなければなりません。しかし中には、手付金や出張費の前払金のように後で精算するものもあります。とりあえず出金した時には、「仮払金」等の科目で処理しておいて、精算が済めば本来の科目で処理します。

期末になっても精算が済んでいないものは、そのまま「仮払金」等のままですが、精算が済んでいるのに処理を忘れていないものはないか、確認が必要です。

逆に手付金等を貰う場合も同様です。この場合、精算が済んでいれば収益に振り替えなければなりません。

 

減価償却費

建物・機械・自動車のように何年も使えるものは、取得(購入)した時点では資産として処理します。使用していくうちに資産価値は下がって行きますから、この目減り分を費用に振り替えます。この手続きを減価償却と言い、毎年度末には今年度分の目減り分を費用にします。

 〔参考: 減価償却 〕

以上は損益計算の概要ですが、もう一つ大事なことがあります。それは、期末時点での資産内容を明らかにすることです。

■ 期末の資産内容

資産にも色々あります。現金や預金の他、掛売りをしていれば売掛金(債権)、手形で取引をしていれば受取った手形、土地・建物、車両、機械・工具、備品 …… 等々です。

資産にはその出所 ( デドコロ = 裏づけ ) があります。

事業開始の時点では、ほとんどが出資金(個人事業の場合は元入金)です。当座の現金・預金を手許に置いて、他に必要な車両や備品を揃えますよね。 

事業開始後は、仕入(製造)、販売、借入 … 等々で資産の出所が良く分からなくなり、資産1品1品の出所なんかはさっぱり分かりません。そこで、総額で分かるようにします。

資産

●現金や預金

●売掛金や受取手形

●土地・建物、車両、機械・工具、備品など

 

 

 

500  

2,000  

3,500  

 

 

(6,000)  

負債

●買掛金や未払金、預り金

●借入金

 

 

1,800  

1,200  

 

出資金

2,000  

当期利益

 

1,000  

(6,000)  

複式簿記で記帳していくと、機械的にこの総額一覧表が作成できるようになっています。右下段に当期利益がありますが、利益からも資産の購入等に充てていることを現しています。

■ 会計上の決算/実際の決算

決算は会計期間の損益と、期末時点の資産内容を確定することですが、一定の手順に従って行う機械的な会計上の処理に過ぎません。

頭を悩ますのは

◆利益が多く出そうな場合は税務との関係です。決算利益の計算が税務申告の出発点で、利益が多ければそれだけ税金も多くなります。

 ●費用にできるもので、見落としは無いか?

 ●違う処理方法を選択して、費用を増やせないか?

◆借入金を抱えているのに赤字続きになる場合は、銀行の貸し剥がしが心配です。

 ●売却して利益の出る資産は無いか?

 ●減価償却をしないで、費用を圧縮する

 ●役員が会社に資産を貸し付けている場合は、賃借り料を免除してもらう。

 ●銀行以外からも借入がある場合は、利息をまけてもらう。

等々、少しでも赤字を減らさなければなりません。

製作・著作 協進会  2003/12


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