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法人税申告書小ゼミ

法人税申告書の「書き方・作り方」の解説書は幾つか出ていますが、解説書によって説明が異なっているものやほとんど触れられていない事項を、僭越ながら取り上げてみたいと思います。

■源泉所得税

別表5(1)の純額表記

別表4と別表5の照合計算

期中除去資産の償却額

按分計算は掛けてから割る


■ 源泉所得税

源泉所得税を別表5(2)に記載する? しない? … 記載するなら、どのように記載するか? 答は諸説あります。

1.  

記載しない

2.  

「その他」の「損金算入税」欄に記載する

3.  

「その他」の「損金不算入税」欄に記載する

4.  

源泉所得税額のうち損金算入額は「その他/損金算入税」欄に記載し、損金不算入額は「その他/損金不算入税」欄に記載する … これはチョットややこしいのですが、別表6(1)で税額控除する金額を計算する際、短期所有株式等に該当する部分は税額控除できずに損金経理のままとし、税額控除を受ける部分は損金不算入の申告調整をしますから、別表6(1)の計算結果に従って記載する … ということのようです。

所得税の他、利子割も源泉徴収されますが、所得税と利子割では扱いが異なります。利子割は全くの損金不算入ですが、所得税は損金算入するか損金不算入にして税額控除を受けるかは申告者の選択です。そのため、別表5(2)には利子割欄はありますが、所得税欄はありません。

さて、ここからは独断が混じるかもしれませんが … 

所得税は申告調整(税額控除)しない限り、損金算入税です。

損金算入税を損金算入しても申告調整は不要です。

税額控除に関する処理は別表5(2)ではなく別表6(1)で行います。そのため、別表4では”法人税額から控除される所得税額(別表六(一)「6の③」)”と明記されています。

別表5(2)でも様々な申告調整に関する事項を記載しますが、こと所得税の税額控除に関しては専用の別表6(1)がありますから別表5(2)に記載する必要はなく、敢えて記載する場合でも「損金算入税」欄に総額 (損金算入額と損金不算入額の分割計算前の金額) を記載すれば事足りるはずです。

■別表5(2)

「納付状況の明細」で、どのように経理処理されたかを記載。記載する場合は「損金算入税」欄。

■別表6(1)

損金算入額と損金不算入額を区分計算する

申告調整

■別表4損金不算入)

■別表1税額控除)

初めに挙げた 「4」 は立派な見解のようにみえますが、 別表6(1)の計算結果待ちになるので実務では二度手間です。更には別表4の注釈 (別表六(一)「6の③」) は  (別表六(一)「6の③」 又は別表5(2)の損金不算入欄に記載した源泉所得税のうち損金経理した金額)と読み替える必要が生じてきそうです。

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○○

■ 別表5(1)の純額表記

中間申告(納付)額 > 確定申告額 となった場合は還付請求しますが、別表5(1)には次のように記載します。

〔例〕

法人税・地方税合わせて 626,000円の還付請求額となったが、内訳は次の通り。

法人税

395,000  

道府県民税

80,300  

均等割は別途 25,000円

市町村民税

150,700  

均等割は別途 65,000円

   計

626,000  

区        分

期 首 現 在

利益積立金額

当  期   の  増  減

翌期首現在

利益積立金額

利益準備金

 

未収還付法人税

未収還付道府県民税

未収還付市町村民税

 

1111111111

 

 

1111111

 

 

 

395,000

80,300

150,700

 

 

 395,000

80,300

150,700

納税充当金

1      

   1 1111111  

 

     

未納法人税

未納道府県民税

未納市町村民税

      

        

中間

 △

△                  

      2,00△         25,000

 △         65,000

確定

 △

中間 

 △

確定

△  25,000

中間 

 △

確定

△ 65,000

 差 引 合 計 額

1

1

1

1

このように還付請求額を別表5(1)の空欄に「未収還付法人税」等の項目を設けて記載する方法以外に、次のような記載方法もあります。

区        分

期 首 現 在

利益積立金額

当  期   の  増  減

翌期首現在

利益積立金額

利益準備金

 

 

 

1111111111

 

 

1111111

 

 

 

 

 

納税充当金

1      

   1 1111111  

 

     

未納法人税

未納道府県民税

未納市町村民税

      

        

中間

 △

 △                 

      25,0△       25,000

 △       65,000

確定

395,000

中間 

 △

確定

55,300

中間 

 △

確定

 85,700

 差 引 合 計 額

1

1

1

1

法人税はそのまま、地方税の場合は均等割の要納付額との差額(純額)を、頭の「△」を消して「未納税額」欄に記載します。この方法では

通常の場合でも還付請求が発生する場合でも必ず「未納税額」欄に記載することになり、「未収還付法人税」等という中途半端な処理が不要になります。

●その結果次の別表4と別表5(1)の照合計算が合理的になります (次項を参照してください) 。

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△△

■ 別表4と別表5の照合計算

原則として別表4の留保欄に記載する項目は、別表5(1)にも記載します。

例外として、法人税・住民税の当期分の中間申告額(利子割の期中発生額を含みます)と、確定申告額の発生額(要納付額)については別表4には記載しません(別表4に記載するのは、実際の納付額です)。従って、この2件は別表4と別表5(1)の間に関係がありません。

税務署配布の別表5(1)の欄外には、検算式が記載されています。

期首現在利益積立金額+別表四留保総計-中間分、確定分法人税県市民税の合計額

=差引翌期首現在利益積立金額

なぜ、こうなるかを図解すると

〔 別表4 〕

区         分

総    額

留    保

社 外 流 出

  当期利益又は当期欠損の額

  

1

配 当

   1

その他

 1

加算

1

1

その他

         1

        

減算

1

1

 1

 1

      仮           計

1

1

1

1

 

1

仮計以降は全て流出

1

1

   所得金額又は欠損金額

1

1

1

12

〔 別表5(1) 〕

区               分

期 首 現 在

利益積立金額

当 期  の 増 減

翌期首現在

利益積立金額

利益準備金

(   )積立金

 

 

 

 

 

繰越損益金

 

 

未納法人税

未納道府県民税

未納市町村民税

 

当期中間申告額

当期確定税額

 

 差 引 合 計 額

 

 

 

 

ただし、還付請求額が発生する場合は(通常の処理方法では)、別表5(1)では「未収還付法人税」等の項目名を付し

て「未納税」以外の欄に記載します。しかも、この金額は確定税額と同様に別表4を経由せず、別表5(1)に直接記載します。

従って、別表5(1)の欄外に記載されている照合計算式は、還付請求額が生じている場合は、この金額も除外する必要があります。

〔 別表5(1) 〕

区               分

期 首 現 在

利益積立金額

当 期  の 増 減

翌期首現在

利益積立金額

利益準備金

(   )積立金

 

 

 

 

 

未収還付法人税等

 

 

未収還付法人税等

 

繰越損益金

 

 

未納法人税

未納道府県民税

未納市町村民税

 

当期中間申告額

当期確定税額

 

 差 引 合 計 額

 

 

 

 

これを前項の「純額法」で記載すると、「未収還付法人税等」の項目は不要ですから例外的な処理も不要になります。

この「純額法」の方が理論的には首尾一貫していて優れた処理方法だと思うのですが、実務ではほとんど採用されていないようです。

別表5(1)の欄外に記載されている検算式のうち

-中間分、確定分法人税県市民税の合計額 を別表5(2)の金額で計算する … との説もあるので、ついでに検討しておきましょう。

通常の場合は、別表5(1)でも別表5(2)でも金額は一致します。

還付請求の場合は両者は一致しません。別表5(2)では確定税額も還付請求額も「当期確定」欄に記載します。地方税では均等割との差引純額を記載しますから、別表5(1)の「未収還付法人税」等も除外する必要はありません。

では、別表5(2)の金額で常に照合可能かといえば、そうもいきません。

中間還付請求額が発生する場合でしかも中間申告額に未納額があれば、この未納分を差し引いた金額が還付請求額になるため、別表5(2)の「確定/期末現在」欄には差引還付請求額と未納相当額を二段書きします。そして差引還付請求額を別表5(1)に「未収還付法人税」等として転記するのですが、別表5(2)の「確定/当期発生」欄は未納相当額も含んだままの金額です。

この状況で ( -中間分、確定分法人税県市民税の合計額 ) の金額を、別表5(2)の「当期発生」欄で計算すると誤差が生じてしまいます。

従って、-中間分、確定分法人税県市民税の合計額 の計算は別表5(1)の金額を当てはめ、還付請求の場合は「未収還付法人税」等の金額も除外するのが妥当と言えるでしょう。

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◇◇

■ 期中除去資産の償却額を計上している場合

償却資産を期中に除去した場合、通常は期首の帳簿価額で除去損を計上します。

〔例〕

期首帳簿価額 184,500円 (耐用年数6年、償却方法=定率法、償却率=0.319)の備品を、期首日から5ケ月目に廃棄した。

固定資産除去損

184,500

     備品

184,500

5ケ月分の償却費を計上して、その残額を除去損に計上する処理方法もあります。

減価償却費

24,523

     備品

24,523

固定資産除去損

159,977

     備品

159,977

後者の場合、別表16(2)にはどうのように記載すればいいでしょうか

期末現在の帳簿価額

0  

159,977  

別表16(2)では「期末現在の」となっていますが、期中除去の場合は「除去時点の」と読み替える必要がありそうです。そうしないと、左側のような計算結果になってしまいます。

 

除去時点の簿価は 159,977円で、これは除去損によって消えますから、最終の簿価は「0」になります。

備考欄に「期中除去、除去までの期間分を償却費に計上」とでも記載しておけばよいでしょう。

     :

 

 

改 定  帳  簿  価  額

0  

159,977  

損金計上当期償却額

24,523  

24,523  

     :

 

 

差    引    計

24,523  

184,500  

 耐   用   年   数

6年       

6年      

 償     却       率

  0.319  

0.319   

算 出 償 却 額

3,259  

24,523  

5ケ月分

     :

 

 

 

      計

3,259  

24,523  

 

     :

 

 

 

      計

3,259  

24,523  

 

 当  期  償  却  額

24,523  

24,523  

 

償 却 不 足 額

 

0  

 

償 却 超 過 額

21,264  

0  

 

期首の帳簿価額で除去損を計上しておけば、別表16(2)に記載する手間が省けます。

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◇●

■ 按分計算は掛けてから割る

新設法人や解散年度、事業年度の変更等で事業年度の月数が「12」に満たない場合は、中小法人で法人税の軽減税率が適用される金額や法人住民税の均等割額など、月数按分が必要です。

軽減税率適用額の計算では、800万円 × 月数 ÷ 12 ですが、割ってから掛けるのか 掛けてから割るのか? 月数が「6」の場合

 ① 割ってから掛けると  8,000,000 ÷ 12 × 6 = 3,999,999.999---- ⇒ 百円未満を切捨てると 3,999,900

 ② 掛けてから割ると   8,000,000 × 6 ÷ 12 = 4,000,000

月数が「6」の場合は ② が正しいことはすぐ判りますが、「6」以外の場合は間違いそうです。割ってから掛けるのが正しいと、月数が「12 」の場合でも不具合が生じます。

均等割り額の計算で年額が10万円の場合  100,000  ÷ 12 × 12 = 99,999.999---- ⇒ 百円未満を切捨てると 99,900

四則計算の順番通り、掛けてから割るのが正しい手順です。

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製作・著作 協進会  2004/12 ~ 2005/06 ( 2006/06改定 、2018/06補筆 )

 

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