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試算表と月次損益

ある程度の事業規模になれば毎月試算表を作成するのは常識です。決算期になって税金の心配をしたり、赤字対策を考えても手遅れだからです。

■ 試算表

伝統的な簿記の教科書では、試算表は「記帳誤り・転記誤り」がないかを検証するものとされていますが、合計計算や転記処理はコンピュータ(パソコン)任せが普通の現在では、そのような目的で作成することは、まずありません。

著名な市販会計ソフトで試算表を作成すると、ほぼ次のような形式の試算表が表示されます。

貸借対照表

損益計算書

製造原価報告書

 

勘 定 科 目

前 月 ま で

当     月

当月までの累計

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試算表といえば、合計試算表、残高試算表、或いは合計残高試算表のはずなのに、まるで決算書のような形式です。でも、このような形式であれば月単位での損益計算もでき、○月末現在の資産内容も判明します。では、どういう仕組みでこの様な形式の試算表が作られているのか考えてみましょう。

伝統的な試算表(残高試算表)は

科   目

借方残高

貸方残高

(資産科目)

******  

 

(負債科目)

 

*****  

(資本科目)

 

****  

(収益科目)

 

********  

(費用科目)

********  

 

合   計

 *********  

*********  

ですが、これを「資産・負債及び資本」科目、「収益・費用」科目別に分けると ( 製造勘定は省きます  )

科   目

残 高 試 算 表

貸借対照表

損益計算書

借   方

貸   方

借   方

貸   方

借   方

貸   方

(資産科目)

******  

 

******  

 

 

 

(負債科目)

 

******  

 

******  

 

 

(資本科目)

 

****  

 

****  

 

 

(収益科目)

 

********  

 

 

 

********  

(費用科目)

********  

 

 

 

********  

 

 *********  

*********  

不一致

不一致

損    益

 

 

 

****  

****  

 

 

 

********  

********  

********  

********  

単に科目を「貸借対照表」と「損益計算書」に割り振っただけでは、どちらも貸借金額は一致しません。しかし差額は「貸借対照表」と「損益計算書」とも同額です( 精算表 の説明を参照してください)。要は、整理記入欄のない精算表です。ここでは、それぞれを貸借別行にしていますが、1行にまとめてしまえば会計ソフト形式の試算表になります。

■ 月次損益

月次で試算表を作成し月次損益を計算する場合、伝統的な試算表であれ貸借対照表・損益計算書形式であれ、次の点は工夫が必要です。

●減価償却費

月割額を毎月計上すれば問題は生じませんが、通常は決算処理事項ですから、月次の損益計算では月割額を別途経費に加える。

●棚卸額(商品・製品のほか、製造業では原材料・仕掛品も)

在庫変動が小さい事業所では、これを無視しても構わないかもしれませんが、季節変動の大きい事業では何らかの方法で調整する必要があります。

●前払費用

前期から繰越した前払費用は翌期首日には当期の費用に振替えるのが原則です。例えば「前払家賃」であれば

   ○月1日    地代・家賃  100,000       前払費用  100,000   

月末に、次月分の家賃を支払うと

   ○月30日   地代・家賃  100,000       現金・預金  100,000   

初めの月では、地代・家賃が 200,000 になり、最終月は「0」になってしまいます。

翌期首日に振替処理せず、決算処理にしてしまえば

    決算日     地代・家賃  100,000       前払費用  100,000   

            地代・家賃  100,000       現金・預金  100,000   

            前払費用    100,000      地代・家賃  100,000   

ずぼらなやり方かもしれませんが、月次損益計算で不具合が生じることもなく、決算も正しく処理されます。

 

なお、未払費用については、支払時は負債科目が消えるだけなので月次損益には影響しません。

会計ソフトに調整機能があれば、それらを使ってできるだけ正確に計算しましょう。調整機能がない場合は、表計算ソフトなどで調整処理ができるフォームを作っておくとよいでしょう。

 

 製作・著作 (有)協進会  2008/04


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