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消費税の課税対象と課税区分

消費税の基本的な仕組みは、売上(収入)に係る消費税額から仕入・経費・資産購入に係る消費税額を控除して、その差引き額を申告・納付するものです。

従って、正確な申告・納付のためには、消費税の課税対象となる取引か否かを把握しておく必要があります。

●課税売上額

売上(収入)のうち、課税対象外のものと非課税のものを除いた額です。この額は、課税事業者になるか免税事業者になるかの判定、簡易課税制度の適用を受けることができるか否かの判定に必要です。

●課税売上割合

課税売上割合は 〔 課税期間中の (課税売上げの額)÷(課税売上げの額+非課税売上の額)〕ですが、課税売上げの額には免税となる輸出等の売上額を含みます。課税売上割合が95%未満の場合は、課税仕入(仕入・経費・資産購入)に係る消費税額の全額は控除できず、控除額の配分計算が必要になります。

税抜経理でも税込経理でも、課税事業者であれば消費税に関する経理処理は必須です。課税対象か課税対象外(不課税)か、課税対象であれば課税・非課税・免税の区分を記帳しておいて、正確かつ迅速に集計できるようにしておきましょう。さもなければ、決算・申告の際に莫大な労力が必要になります … ほとんどの方はコンピュータ(パソコン)任せで集計作業は心配無用でしょうが、それでも … 課税・非課税などの区分が間違っていると、集計結果も間違っていることになります。

なお、免税事業者の場合は税込経理が強制されており、消費税に関する経理処理は不要です。

■ 消費税の課税対象取引

消費税の課税対象は国内取引と輸入取引のうち、次の要件に当てはまるものです。

■ 国内取引

資産の譲渡、資産の貸付、役務の提供である

資産の譲渡には通常の売買のほか代物弁済、金銭債権の譲受け等も含まれます。

国内で行っている

事業者が事業として行っている

対価を得て行われる資産の譲渡等が反復・継続、独立して行われていれば、規模の大小は問いません。サラリーマンの副業であってもこの要件に該当すれば「事業者が事業として行っている」ことになります。

対価を得ている

原則として無償取引は課税対象になりませんが、次の2件は例外です。

●個人事業者の事業用資産の自家使用

●法人の役員に対する贈与及び著しい低廉譲渡

以上の要件に該当すれば課税対象で、該当しないものは課税対象外です(一般に「不課税」といわれています)。

●法人の場合は全て「事業者が事業として行っている」ことになりますが、個人では次のものは「事業として」には該当しません。

自宅の売却

事業資金調達のためにした生活用資産の売却

仕入代金の支払に代えて家事用資産を引き渡す代物弁済

事業資金以外の預貯金の利子の受取り

ゴルフ会員権等 ( 会員権取引業者は除 く ) の譲渡

なお、給与に関する取引は法人・個人とも消費税の課税対象外です。

●消費税の課税対象は 「対価を得て行なわれる資産の譲渡等」に限られます。次のものは 「対価を得て行われる資産の譲渡等」 には該当しません。

贈与、使用貸借権の無償提供

金銭出資、利益の配当、剰余金の分配

保険金、共済金、損害賠償金、立退料の授受

名目が損害賠償金であっても、損害を受けた資産等が加害者に引き渡されて使用される … などの場合は、実質が資産の譲渡に該当しますから、資産の譲渡の対価になります

寄附金、慶弔費(現金)、見舞金等の授受

補助金、助成金の受入れ

保証金、権利金のうち返還されるものの受入れ

収用に伴う収益補償金、移転補償金、経費補償金

輸入取引

保税地域から引き取られる外国貨物 ( 保税地域 … 輸入貨物を許可が下りるまで一時的に保管する場所 )

輸入取引については、「事業者が事業として行っている」等の要件はありませんから、個人輸入でも原則は課税取引です。

■ 非課税と免税

■ 非課税

税の名称は消費税ですが、課税の対象は「消費」を提供する事業者の側からすれば「資産の譲渡等」です。土地や有価証券の譲渡等は「消費」には該当しませんが「資産の譲渡等」には該当するので、これらは非課税として課税除外としています。また、税負担を求めることが適正でないと判断されるものは、政策として非課税になっています。

「消費」

に該当

しない

もの

土地及び土地の上に存する権利の譲渡・貸付

貸付ける建物等の敷地となっているものは、区画整理等されている貸し駐車場は課税対象です。

土地建物の一括譲渡の場合は、土地部分は非課税です。

有価証券・支払手段の譲渡

有価証券の発行は課税対象外 ( 課税資産の現物出資を除く )、有価証券の譲渡は非課税

金融取引(利子・保証料・保険料等)

配当金は課税対象外、利子は非課税

郵便事業会社等が行う郵便切手・印紙・証紙の

譲渡物品切手類の譲渡

郵便切手は譲渡(購入)時点では非課税、実際に使用した時点で課税取引になります。

物品切手類 ⇒ 商品券・映画のチケット・プリペイドカードなど

行政手数料・億歳郵便為替・外国為替

 

政策的

非課税

社会保険医療、介護サービス・社会福祉事業、医師等による助産、火葬・埋葬、身体障害者用物品の譲渡・貸付・修理等、学校における授業料・検定料・入学金、教科用図書の譲渡、住宅家賃(共同住宅のいわゆる共益金を含む)

■ 免税輸出取引)

輸出及び輸出類似取引 ( 国際運輸・国際通信・国際郵便など ) は売上に係る消費税が免除されるだけでなく、仕入に係る消費税が控除されますので、売上が全て輸出の場合は、還付申告によって仕入に係る消費税額の全額が還付されます。また、課税売上高や課税売上割合の計算では課税売上高に含まれます。免税によって、結果は売上に係る消費税額=「0」になりますが、非課税とは性格が全く異なります。免税は、税率「0」で課税される取引といえます。

●輸出免税の要件

① 資産の譲渡等が課税事業者によって行われること

② 資産の譲渡等が国内で行われること

③ 資産の譲渡等が課税資産の譲渡等に該当すること

④ 資産の譲渡等が輸出及び輸出類似取引に該当すること

⑤ ④であることが証明されていること

免税事業者の輸出及び輸出類似取引は免税されません( 納税義務は生じませんが課税取引になります )。

非課税資産の譲渡等を行ない所定の証明を得た場合は、その輸出等取引を課税資産の輸出等とみなし仕入に係る税額控除ができます。

■ 輸入取引の非課税・免税

輸入取引は全て課税対象ですが、次のものは非課税です。また、関税標準価格が1万円以下の物品等は免税になります。

非    課    税

免        税

・有価証券及び支払手段(収集用及び販売用は除く )

・郵便切手類、印紙、証紙

・物品切手類

・身体障害者用物品

・教科用図書

・関税標準価格が1万円以下の物品

・返品、展示品引取、家財の国内持ち込みなど理由で関税が免除されるもの

■ 課税・非課税等の判定事例    

  お断り 〔事例〕では税率を 5%にしていますので、8%(10%)増税後は消費税額が異なってきます。

土地の一時的貸付け、

 ウィークリーマンションの家賃

土地の貸付けの契約期間が1ケ月未満の場合は課税取引になります。

貸付期間が1ケ月に満たない住宅家賃は課税取引になります。

駐車場付き貸し家・

 アパート等の家賃

駐車場付きとしてその全体が住宅の貸付となっている場合は、全額が非課税です。

自動車保有の有無に関らず、入居者1戸あたり1台分の駐車スペースが確保されている場合も全額が非課税です。

駐車場が住宅の敷地と別の場所にあったり、入居者以外にも貸し付けられている場合は、駐車場料相当額は課税対象になります。

固定資産税等の精算金

不動産の売買にあたっては固定資産税の未経過分を精算するのが通例ですが、固定資産税は賦課期日(通常は1月1日)の所有者に対して貸される税金であり、不動産の購入者が支払うべきものではなく、未経過分の精算金は不動産の売買代金の一部になります。

ただし、非課税となる土地譲渡部分の清算金は非課税になるとの判断が優勢です。

広告用資産への補助金

広告用資産(什器や車両等)の無償譲渡は課税対象外ですが、広告用資産にメーカー名や商品名を付すことを条件に補助金を授受する場合は課税取引になります。

通勤手当、出張旅費等

通常必要と認められる金額は、給与等を支払う事業者の課税仕入に該当します。所得税では一定額以下が非課税、それを超える部分は課税対象ですが、消費税では全額が課税仕入です。

〔事例〕

通勤手当を給与に含めて仕訳すると

給与と通勤手当を分けて仕訳すると

給   与   350,000

通勤手当      15,000

   計               365,000

預り金(社会保険・源泉税)

         43,00

差引支給額     332,000

給与 365,000  

預り金    43,000

現 金  332,000 

給与     350,000

通勤手当   14,286

仮払消費税    714

預り金   43,000

現 金  332,000

 

 

 

消費税の規定(規程)では右の処理が正しく、また経費の減少より控除税額の増加の方が納税額が少なくなります。

郵便切手等、ごみ処理券

切手の売買自体は非課税で、使用したときに課税取引となります。ただし、購入時点で課税取引として処理することを継続している場合は、その処理が認められます。

ただし、金券ショップなどで購入したものは売買自体が課税取引です。

原 則 の 処 理 方 法

簡   便   法

金券ショップなどで購入の場合

(購入時)

貯蔵品    8,000

(使用時)

通信費     762

仮払消費税     38

 

現 金   8,000  

貯蔵品      800

(購入時)

通信費   762

仮払消費税  38

 

 

現 金  8,000

簡便法に同じ

 

ごみ処理券についても、切手類と同じ処理方法が認められています。

商品券等

区           分

判 定

・商品券の発行

金銭の預りであり、資産の譲渡等に該当しない

対象外

・商品券の売買

現金と商品券の交換(両替)

非課税

・物品との交換

対価の商品券による支払

課 税

・商品券の回収

代金の決済

対象外

・取扱手数料

役務提供の対価

課 税

会費

同業者団体・組合、ロータリークラブ・ライオンズクラブ等の入会金、通常会費は課税対象外ですが、個々に徴収される費用について課税か課税対象外かを判断するのが困難なときは、次の扱いになります。

◆同業者団体、組合等が不課税であることを構成員に(請求書・領収証等等で)通知している場合 ⇒ 不課税

◆上記以外の場合 ⇒ 課税

交際費

現金で授受する慶弔費、見舞金等は不課税ですが、お祝い・見舞い品(物品)は課税対象です。

商品券・ギフト券・ビール券等 ⇒ 商品券等を参照してください。

接待飲食費に含まれるチップ代、ゴルフプレイ代のうちゴルフ場利用税・入湯税は不課税です。

ファイナンスリース

取引リース料

平成20年の改正にり、ファイナンス・リースは売買処理が原則になりましたので、消費税でも次の扱いになります。

◆対象資産の引渡し ⇒ 課税 ( 対象資産が非課税品の場合は非課税 )

◆契約で明示されている利息・保険料 ⇒ 非課税

◆月々のリース料 ⇒ 不課税

中小法人などではファイナンス・リースでも、従来通り賃貸借処理している場合はその処理が認められます。この場合、リース資産に係る消費税額を引渡のあった年度に全額を処理する (一括控除する) か、リース料の支払の都度処理する (分割控除)する か、いずれかを選択します。分割控除は従来のリース料支払と同じ処理方法です。

一括控除

分割控除

対象資産の引渡し

課税

不課税

契約で明示されている利息・保険料

非課税

非課税

月々のリース料

不課税

課税

〔例〕

リース総額  12,132,000円 (リース資産額 9,840,000円、 利息相当分 1,800,000円 、消費税 492,000円)

リース期間  5年  毎月の支払額 202,200円

一  括  控  除

分 割 控 除

取引開始日

仮払消費税       492,000

リース消費税債務    492,000

何も処理しません

リース料支払時

賃貸料         164,000 

リース消費税債務      8,200

支払利息        30,000

現金預金      202,000

賃貸料    164,000 

仮払消費税    8,200

支払利息    30,000

    現金預金  202,000

ガソリン・灯油・軽油

ガソリン・灯油は課税ですが、軽油については

◆請求書・領収証に軽油取引税の額が明記されていれば ⇒ 軽油取引税相当額は不課税、その他の部分は課税

◆明記されていなければ ⇒ 全額が課税

弁護士・税理士・司法書士等の報酬

支払報酬や交通費等は課税対象ですが、登録免許税等は不課税です。

 

個人事業者の事業家事共用資産

資産購入時に自家使用分を除いた部分を課税仕入額として処理します。事業専用資産を一時的に自家使用した場合は、そのような処理は不要です。

賃貸住宅の売却

住宅家賃は非課税ですが、住宅の売却自体は課税取引です。

家賃収入は非課税のため課税売上が少なく免税事業者となっていても、住宅の売却によって1000万円超の課税売上があれば、翌々年度から課税事業者となります。

 

製作・著作 協進会  2010/08 

 

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