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消費税の総額表示と端数処理について

■ 平成16年4月から、消費税の総額表示がスタートしました。

最終消費者への販売時に総額表示を義務付けるもので、業者間の取引は従来通りです。

値札や広告に表示する価格を、消費税を含んだ総額としなければなりません。

¥8,400

¥8,400(本体価格¥8,000+消費税)

¥8,400(本体価格¥8,000+消費税¥400)

等と表示しなければならないことになります。

■ 消費税法施行規則第22条第1項

消費税法施行規則第22条第1項 が平成16年3月31日をもって廃止されました。

規則第22条第1項 … 売上に係る消費税額の計算について、「税抜価格表示」を前提に、決済段階で別途請求される消費税相当額の円未満の端数を処理した後の金額を基礎に積上げ計算を認める特例措置

この特例措置は、不特定多数の消費者を対象とする小売業者を念頭に設けられたものです。決済段階とは、簡単に言えば「レシート単位」です。つまり、客1人につき1回の端数処理を認めると言うことです。大した問題ではないように思えるかも知れませんが、チリも積もればで、客数が多い場合は相当な額になります。

〔例〕

1日当たりの客数が2,000人で、端数を切り捨てる場合。 端数は0.05円~0.95円ですから平均をとって 0.475円とすると1年間では(360日営業とします) 0.475×2,000×360=342,000 の差額になります。

ただし、経過措置 が設けられています。

事業者間の取引では、現行の特例措置が当分の間適用されます。

税込価格で決済を行う場合で、総額の 5/105 相当額を消費税額として明示している場合は、その金額を基に消費税額の計算を行うことができます (2003/10/01から) 。

これは、事業者間の取引か、対消費者の取引かを問いません。

対消費者の取引では、(1品ごとの)価格表示が総額であれば、従来通りの外税方式での決済が3年間 (2007/03/31まで)認められます。

 … 認められと言っても、客(消費者)とのトラブルが発生する可能性が大きいのに、レジシステムをそのままにしておくとは考え難いのですが、如何でしょうか。

上の2つは 「当分の間」 となっているだけで、何時までかはっきりしません。

なお、この規則の適用を受ける場合の、消費税申告書の表記も次のように改正(変更)されています。

改正前

規則22条1項の適用

改正後

課税標準額に対する消費税額の計算の特例の適用

経過措置が終了して完全廃止になると、どうなるか? 消費税の申告時には、(原則通り)年間の課税品総売上を元にして計算しなければなりませんから、端数処理分だけ税額が増え、従ってその分だけ純売上額が減ることになります。

■ 経理処理

総額表示の義務化は 「最終消費者への販売時に総額表示を義務付けるもの」 ですから、経理処理(税込・税抜)に影響を与えるものではないはずです。 

しかし、規則第22条第1項の廃止は、これまで税抜経理で消費税額を処理して申告時に規則第22条第1項の適用を受けてきた事業者に若干の問題を生じさせそうです。

これまでは、帳簿上の「預り(仮受)消費税額」を申告上の「消費税額」にすればよかったので、帳簿上の消費税の差額 (「預り」-「仮払」) が申告額と一致 しました (100円未満は雑収入等)。

この規則が完全に廃止されると、申告額と端数処理の累計額との差額が生じます。差額は税込経理の場合と同様に費用(損金)処理することになりそうですが、この金額が大きいと、何のための税抜経理か??です。

端数処理を取引単位(レシート単位)ではなく、日計単位で計算しておけば差額はそれほど大きくはならないでしょう。更に決算で調整することも考えられます。

なお、税込経理で処理している事業者の場合は、総額表示も規則第22条第1項の廃止も、何ら影響がありません。

■ その他

 

「総額表示義務」とは関係ありませんが、端数処理をめぐる 「?」  はまだありますので、ついでに書き加えておきます。

●スーパーやコンビニでは、外税品・内税品・課税非品を取り混ぜて販売しています。

 

外税品・内税品についてそれぞれ別個に端数処理をしてもいいのでしょうか(端数処理は切捨てとします )?

販売金額には端数処理の問題(客とのトラブル)は生じません。

 

 

消 費 税

外税品

1,425

71

内税品

460

 

合 計

1,956

経理処理では、それぞれ別個に端数処理をするか、取引単位で処理するかで消費税額が異なってきます。

別個に端数処理をする場合

 1,425 × 0.05 ≒ 71

 460 × 5 ÷ 105 ≒ 21

 消費税計    92

取引単位で処理する場合

(1,425×0.05)+(460×5÷105)=71.25+21.9047…≒ 93

某コンビニチェーン店では別個に端数処理をする方法をとっていますが、これが問題になったことは無いようです。

●事業者間の取引では、月単位で請求するのが一般的です。

 

1ケ月間の本体価額の合計額を基にして、消費税額を上乗せる方法

1取引ごとに本体価額と消費税額を計算し、それぞれ1ケ月間の合計額、総額を表示する方法

 

日  付

納 品 額

消費税額

**/**

87,520

 

**/**

105,107

 

 

 

合 計

732,451

36,622

今回請求額

769,073

日  付

納 品 額

消費税額

**/**

87,520

4,376

**/**

105,107

5.255

 

 

合 計

732,451

36,620

今回請求額

769,071

 

端数処理を切捨てにする場合、取引単位で請求書を作成する方が請求額が少なくなるのが通常です。

さらに、伝票ごとに本体価額と消費税額を計算してから総請求額を計算する方法をとっている事業者もいます。

端数処理をめぐっては、様々な単位で処理されているのが現状です。一本化すれば判り易くなるのですが、「たかが端数処理」を法令で縛ることはない … との判断のようです。

 

製作・著作 協進会  2005/01 (改訂)

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