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個人事業者の決算と申告

青色申告と白色申告 〕   〔 決算書/収支内訳書 〕   〔 必要経費 〕   〔 確定申告

 青色申告と白色申告 

事業者は、自ら事業所得・所得税額を計算して申告しなければなりません。事業所得の計算(その基になる記帳)のレベルに応じて、青色申告と白色申告があります。

 青色申告    … 平成17年度以降は、次の2つのレベルに区分されます。

Aランク

(複式簿記)

複式簿記で記帳していることが要件です。
解説書によっては「仕訳帳・元帳・売掛帳・買掛帳・固定資産台帳 … を備えて… 」と説明しているようですが、現金販売だけの事業者であれば売掛帳は、記帳しようにも記帳できませんから、要は実態に即して正確な記帳が確保されていることが要件です。
複式簿記で記帳していれば、損益計算書と貸借対照表の作成が同時に行えます。青色申告用の決算書の1枚目は損益計算書、4枚目は貸借対照表になっています。

Bランク

(簡易帳簿)

複式簿記で記帳していなくても、現金・預金等の出納帳(又は経費帳を兼ねたもの)、売掛帳(売上帳)・買掛帳(仕入帳)、固定資産台帳等を記帳していれば、期末の資産負債内容は把握できます。
簡易帳簿で記帳していても、損益計算書の他に貸借対照表(もどき)を作成すれば、青色申告の適用を受けることができます。貸借対照表(もどき)ですから、「資産負債調」といいます。

Bランク

(現金主義) 

売掛・買掛・未収・未払等は一切処理しません。全て、現金・預金の収支時点で記帳します。
ただし、前々年の所得金額が300万円以下の人が対象です。

青色申告には次の特典があります。
■青色申告特別控除
 必要経費に、次の金額を上乗せします(架空の経費です)。  

区分

平成16年度まで

平成17年度以降

令和2年以降

基礎控除額38万円 基礎控除額48万円

複式簿記

e-Tax による申告の場合又は電子帳簿保存法対応の会計ソフトによる記帳の場合(要申請書提出)

65万円

55万円

65万円

55万円

簡易帳簿

45万円

10万円

10万円

現金主義

10万円

■事業専従者に給与支給が認められます。経費として認められるのは、予め届け出た給与額のうち、実際に支給した金額です。
■その他 … 貸倒引当金の繰入れや、減価償却資産の特別償却の適用など

e-Tax による申告手続きについては ⇒ http://www.e-tax.nta.go.jp/kanbenka/index.htm  (国税庁)

 白色申告

平成25年まで

帳簿類の有無・その内容は問いません。もちろん、何にもなしでは事業所得の計算ができませんから、例えば預金通帳、取引先の請求書、領収証・レシート等で計算します。

平成26年以降

簡易帳簿で構いませんが、日付・科目・金額等の記録が必要です。

■白色申告の場合は、収支内訳書を作成して事業所得を確定します。
■事業専従者への給与支給は認められませんが、一定額の専従者控除は認められています。これは、支給の有無を問いませんが、配偶者控除・扶養控除は認められなくなります。控除額は

●配偶者の場合は86万円、その他は50万円

●専従者控除前の金額 ÷ (専従者の数+1)=A が 86万円(又は50万円)未満の場合は A の金額

 

 

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 決算書 / 収支内訳書 

確定申告には、青色申告者は「青色決算書」を、白色申告者は「収支内訳書」 を添付しなければなりません。申告者が独自に作成した決算書を … という訳にはいきません。

決算書、収支内訳書は次から入手してください。

   ⇒ 国税庁 申告書・申告書付表と税額計算書等 一覧(申告所得税)

 青色決算書 

不動産所得用(不動産の貸付業)、農業用、一般用 の決算書があります。

◆不動産所得用 ⇒ 収入金額欄には「賃貸料、礼金・権利金・更新料」の欄が印刷されています。
◆一般用 ⇒ 「売上収入 → 売上原価 → 差引金額」の構成になっています。

決算書は4ページで構成されています(一般用)。

◆1ページ目 … 損益計算書
◆2ページ目 … 科目明細(月別売上・仕入額、給料賃金、貸倒引当金繰入額、青色申告控除額)
◆3ページ目 … 科目明細(減価償却費、利子割引料、地代家賃、税理士・弁護士等の報酬)
◆4ページ目 … 貸借対照表、製造原価の計算

決算書は所定の形式ですが、決算自体は事業者の実態に即して実施します。ただし、科目の明細を決算書(収支内訳書)に記載しなければなりませんから、決算書の控え(又はコピー)に金額を書き込んで、誤りがないか確認しながら進めるのが良いでしょう。

初めに2ページ目と3ページ目を記載します。

・減価償却費が未計上であれば、本年分の減価償却費を計上します。
・売上・仕入の漏れが見つかれば、追加します。
・地代家賃等で、前払い分があれば「前払家賃(費用)」等で処理して、本年分の必要経費から外します。
・未払いの経費等があれば、本年の経費に追加(未払計上)します。
・製造業であれば、製造原価を確定します(4ページ目)。

明細欄の記載が終われば、損益計算書(1ページ目)に進みます。
・決算書の経費欄に印刷されていない経費科目が必要な場合は、空欄に記載します。
・決算書は事業所得の計算が目的ですから、最後に「青色申告特別控除額」を差引いて所得金額を確定します。

最後に、貸借対照表(4ページ目)を作成します。

・期首欄には前年の繰越額を記載しますが、貸借差額が「元入金」になります。
・期末欄には、資産・負債科目の残高を記載します。最後に本年の損益=所得金額を記載すれば貸借は一致するハズですが、この「所得金額」は 「※青色申告特別控除額」 を差引く前の金額です。
※「青色申告特別控除額」は申告上のいわば架空の経費です。帳簿に記録された金額ではありませんから、貸借対照表では除外します。

 収支内訳書 

収支内訳書にも、不動産所得用、農業用、一般用 がありますが、いずれも青色決算書と比べると記載項目は約半分です。

収支の内訳とその 明細 を記載します。貸借対照表に類するものはありません。

明細  ⇒ 給料・賃金、税理士等の報酬、売上(収入)金額、仕入金額、減価償却費、地代家賃、利子割引料

 

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 必 要 経 費 

 人 件 費 

従業員の給与は当然必要経費ですが、家族従業者は要注意です。

青色申告者の場合は、専従者に支払った給与は必要経費になります。ただし、予め届け出ている金額までが必要経費になる額です。

白色申告者の場合は、専従者に給与を支払っていても必要経費になりません。ただし、申告に際して一定額の専従者控除を受けることができます。

学生は専従者にはなれません。親の仕事を手伝っている高校生・大学生の子にアルバイト料を払っていても、必要経費になりません。

必要経費にならない額は、決算で「事業主貸」に振り替る必要があります。

〔補足〕 店主貸=引出金、店主借=元入金としてもOK。分かりやすい科目名を使ってください。

 減価償却費 

減価償却費の計算は、青色申告・白色申告共通です。

減価償却資産の名称等

面積又は数量

取得価額

(償却保証額)

償却の基礎になる金額

償却方法

耐用年数

償却率

本年中の償却期間

本年分の普通償却費

特 別

償却費

本年分の償却費計

事業専用割合

本年分の必要経費算入額

未償却

残 高

 

 

 

 

A

 

 

B

C

D

 

 

/

/

/

/

/

/

/

 

 

 

/

 

 

償却の基礎になる金額

◆平成19年3月までに取得した資産 ⇒ 旧定額法の場合は取得価額の90%相当額、旧定率法の場合は期首の帳簿残高(期中取得資産は取得価額)です。

◆平成19年3月までに取得した資産で、95%相当額まで償却が済んでいる資産で、5年間の均等償却をするもの ⇒ 取得価額の5%相当額(ただし、償却済みとなった翌年度から)

◆平成19年4月以後に取得した資産 ⇒ 定額法の場合は取得価額と同額、定率法の場合は期首の帳簿残高(期中取得資産は取得価額)です。また、定率法で償却する場合は(償却保証額)欄に、該当額を記載します。

償却方法

原則は定額法です。予め届出ていれば、定率法も採用できます。

耐用年数・償却率

耐用年数表に従って判定します。

本年中の償却期間

期中取得資産は 「使用月数(端数切上げ)/12」 で、その他は 12/12 です。

本年分の普通償却費

 D = A ×B × C

特別償却費

取得価額の一定割合を償却費に上乗せする初年度特別償却と、一定期間普通償却額の一定割合を償却費に上乗せする割増償却があります。

ほとんどの特別償却は、青色申告が要件です。

本年分の償却費計

(普通償却費)+(特別償却費)

事業専用割合

家計と共用している場合は、家計と事業(必要経費)を按分します。

本年分の必要経費算入額

 G =E ×F

未償却残高

期首帳簿価額 - 本年分償却費計(E)

●一括償却資産 ⇒

10万円以上20万円未満の減価償却資産を一括償却資産(種類・耐用年数・使用期間に関わらず3年間で均等償却します)とした場合は

・名称 ⇒ 一括償却資産 

・償却方法 ⇒ 3年均等 

・償却率 ⇒1/ 3

〔補足 …少額減価償却資産の即時償却 〕

青色申告者が取得する30万円未満の減価償却資産は、即時償却(全額を取得年度の必要経費にする)ことができます。ただし、年間で300万円が上限になっています。

青色決算書の「減価償却費の計算」欄に次の事項を記載します。

①少額減価償却資産の取得価額の合計額

②少額減価償却資産について、租税特別措置法第28条の2を適用していること

③少額減価償却資産の取得価額の明細を別途保管していること

〔補足 …固定資産の売却の場合 〕

固定資産の譲渡損益は、100%事業用の資産であっても、事業所得と切り離します。 
 ◆譲渡時に帳簿残額を事業主貸に振り替えます。
 ◆譲渡損益は確定申告の際に、譲渡所得として計算します。
ただし、固定資産を廃棄等した場合は、帳簿残額を「固定資産除去損」等で処理し必要経費とします。

 接待交際費 

事業に関連する接待・供応・慰安のための支出ですが、取引先だけでなく従業員に対して行う場合も、接待交際費になります(福利厚生費になる部分を除きます)。
個人事業の場合は事業に必要な接待交際費は、全て必要経費になります。

 家計との按分 

車両を事業用にも家計(生活)用にも使っている場合、電気代・電話代が事業用と区分されていない場合、店舗付き住宅を借りて事業をしている場合等は、事業用部分と家計用部分に按分(振り替え)しなければなりません。

◆車両等の償却資産の場合は減価償却費を按分します。

減価償却費  250,000     車両             250,000
事業主貸       75,000     減価償却費     75,000 (事業割合70%の場合)

◆その他の経費は、直接按分します。

事業主貸    180,000       水道光熱費   180,000 (家計分を振り替え)

 

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 確 定 申 告 

どこまでが決算事項で、どこからが申告で調整する事項なのか整理しておきましょう。

 決 算 事 項 

仮払金・仮受金・前受金等

 これらの科目に残高があればその内容を確認します。既に内容が確定していれば本来の科目に振り替えます。

前払費用・未払費用

前年から繰越した前払費用・未払費用は、本年に入って既に消えているハズですが、うっかり消し忘れがないか? 家賃等は通常前払いですから、最後に支払った家賃が前払いで処理されているか確認が必要です。
支払期が未到来の費用で、未払計上漏れがないか? 

棚卸(実地 or 帳簿 or 併用)

減価償却額(費)の確定

製造原価の確定(製造業の場合)

家計と事業の按分

車両等の資産を事業用にも家計(生活)用にも使っている場合、電気代・電話代が事業用と区分されていない場合等。

専従者の給与

必要経費にならない部分は、「事業主貸(生活費)」に振り替る必要があります。

決算事項の調整が済んだ段階で得られる損益は
■青色申告の場合 ⇒ 青色申告控除前の所得金額です。
■白色申告の場合 ⇒ 専従者控除前の所得金額です。

 申告用決算書&申告書で調整する事項 

■青色申告の場合 ⇒ 青色申告控除額を差引いて所得金額を確定します。  
■白色申告の場合 ⇒ 専従者控除額を差引いて所得金額を確定します(専従者がいない場合は、当然引けません)。

事業専従者とするか、配偶者控除・扶養控除を受けるか

白色申告の専従者控除額は、配偶者=86万円、その他50万円ですが、これは最高額の場合で事業主の所得金額が少ない場合は、それより少なくなる場合があります。
専従者控除の適用を受けると、配偶者控除・扶養控除の適用は受けられません。配偶者控除+配偶者特別控除=76万円、扶養控除=38万円ですから、事業主の所得金額が少ない場合は専従者控除を受けず、配偶者控除・扶養控除を受けた方が、税金が少なくなる場合があります。

青色申告の専従者の給与所得は「給与収入-給与所得控除」です。
専従者給与が年間 103万円であれば、103-65=38 で、配偶者控除・扶養控除の対象になります。
青色の専従者給与額を幾らにすれば、税金面で有利か? 答は、事業主の所得と同額になる給与収入額ですが(所得税は累進課税ですから同額の場合が一番税金が少なくなる)、事業主と同額或いはそれより多い給与額では ?? ⇒ まあ、非常識でしょうね。

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