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小切手と手形       

手形も小切手似たような大きさ、似たような顔をしていますが

 

 手形

 小切手

大 き さ

手形の方が2回りほど大きい

表 書 き

中央の上段に「約束手形(他の種類もあります)」と書かれています

中央の上段に「小切手」と書かれています

裏  面

裏書欄が印刷されています

なにも無し

印  紙

10万円以上は必要(収入印紙欄が印刷されています)

不要

支払期日

振出日と支払期日を記載します

振出日だけ記載します

〔お断り〕 以下の解説文では、正しくは「金融機関」とすべきところを「銀行」と表記しています。

■ 小切手

現金の代わりに使用します。多額の支払を現金ですると、支払う方も受け取る方も事故・事件の危険がありますから、「支払証書(証券)」を渡して決済が済めば安全です。小切手を受け取った人は、小切手を金融機関 (以下銀行とします) に持っていって現金に換えます(自分の預金口座に入金します)。

小切手は振出人が自分の取引銀行に支払を委託する証券です。振出した時点で自分の口座に支払可能な残高があることが必要不可欠です。

小切手の仕組み

◆◆ 振出し ◆◆

取引先の銀行と当座勘定取引契約を結び(当座預金を作って)、小切手帳を交付してもらいます(有料です)。

金額、振出日、振出人を記入して押印します。

左上(の部分)に何も記載していないものを「持参人払式小切手」、2本線が斜めに引いてあるか、斜め2本線の間に「銀行渡り」等と書いてあるものを「線引小切手」といいます。線引小切手は ①支払銀行と取引がある会社・個人 ②他の金融機関 にしか支払ができません。

なお、線引小切手の振出人が裏面 に記名・押印 (銀行印で押印) すると、線引の効果がなくなります。

 

小   切   手

 

青字 … 振出人が記載します。

金額 

● チェックライターの場合 … 頭は「¥」、後ろは「※」「★」

● 手書きの場合 … 金額は漢数字、頭は「金」、後ろは「円也」

 

 

◆ 印鑑は銀行届出印

◆ 振出日 … 実際に振出した日でなくても構いません。小切手は何時でも換金できるからです。

 

○○県△△市□□

株式

会社 凸凹銀行××支店

 

 

 

 

 

 

(金額)   ¥1,000,000

 

 

上記の金額をこの小切手と引替えに持参人へお支払いください

 

 

平成 ○○年 12月 31

拒絶証書不要

 

 

振出地

△△市

振出人

株式会社 安全商会

代表取締役 山川太郎

 

 

 

〔補足〕 記名式小切手 / 指図式小切手

◆記名式小切手

「上記の金額をこの小切手と引替えに持参人へお支払いください」 の「持参人」を抹消し(訂正印も押し)受取人名を記載したもの

◆指図式小切手

上と同様に「持参人」を抹消し(訂正印も押し)「○○殿またはその指図人」と記載したもの

◆◆ 受取った小切手の換金(取立て) ◆◆

支払銀行に呈示するか、受取人の取引銀行に取立委任 します。

支払銀行へ呈示する場合

振出日の翌日から10日以内

持参人払式小切手

窓口で渡すと換金できます

線引小切手

自分の口座へ振込依頼します

受取人の取引銀行へ取立委任する場合

通帳と銀行備え付の「入金票」に記入し、小切手を添えて提出します。その際、小切手の裏に依頼人の住所氏名を記入しておきます。取立委任ですから、入金されるまでに2、3日かかります。

なお、記名式小切手・指図式小切手ではいずれの場合も、小切手の裏面 に受取人の記名・押印が必要です。また、指図式小切手で受取人以外が所持人のときは、所持人の記名・押印も必要です。

その他

当座預金の引出し … 原則として小切手の振出しが必要で、線引小切手の場合は裏面に記名・押印 します。金融機関によってはカード等での引出しが可能とのことですから、取引先の金融機関 にお尋ねください。

譲渡 … 裏書せずに譲渡するか、裏書して譲渡するかは任意です。裏書した小切手が不渡りになると、裏書人にも遡及義務が生じます。

先日付小切手 … 小切手は現金の代わリですから、日付けに関わらず受取人が呈示した時点で(振出日前でも)換金されます。この時点で預金残高が不足していれば、不渡りになります。

預金小切手(自己宛小切手) … 当座取引のない会社・個人が小切手による支払い求められた場合は、銀行預金小切手(自己宛小切手) を振出して貰いましょう。この小切手は、振出人・支払人とも銀行なので、銀行からすると「自己宛」小切手になります。なお、この小切手を「保証小切手」と呼ぶこともあります。

銀行に支払の資金を預けて、預金小切手(自己宛小切手) の振出しを依頼します。現金で引出す代わりに同額を預金するので、振出し依頼者からすると「預金」小切手になります。

銀行が振り出した小切手で支払を済ませます。

受取人は自分の銀行に呈示して換金します。


■ 手形

現金の代わりに使用する小切手は(ほぼ)即時決済ですが、手形は後日の決済を約した支払証書(証券)です。

2者間の決済を約したものが「約束手形」、3者間の決済を約したものが「為替手形」ですが、為替手形はほとんど使用されていません。以下、為替手形の話は省きます。

約束手形

 

為替手形

債務者(振出人)

債権者(受取人)

 

A(振出人)

 

→:支払 )

Aの債務者(引受人=支払人)

Aの債権者(受取人)

手形は使用目的などで様々に呼ばれていますが、これらは手形の使用目的・形態の呼び方で、手形の種別ではありません。

支払のために振り出した場合 … 支払手形

手形が期日に換金できなかった場合 … 不渡手形

代金を手形で受取った場合 … 受取手形

金策のために振り出された場合 … 融通手形

手形を期日前に割り引いた場合 … 割引手形

手形を振り出して融資を受ける場合 … 貸付手形

受取った手形を裏書して譲渡した場合 … 裏書(回し)手形

 

約束手形

 

約 束 手 形

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青字 … 振出人が記載します。

金額 

● チェックライターの場合 … 頭は「¥」後ろは「※、★」

● 手書きの場合 … 金額は漢数字、頭は「金」、後ろは「円也」

 

振出人が法人の場合は

● 会社名

● 代表者の役職(肩書き)

● 代表者名

が必要です。

また、押印は銀行届出印で。

収入印紙

 

支払期日 平成 ○○年 331

支払地   ○○県△△市

支払場所 株式会社 凸凹銀行××支店

(金額)   ¥1,000,000

 

上記の金額をあなたまたはあなたの指図人へこの約束手形と引替えにお支払いたします。

 

平成 ○○1231

 

振出地  ○○県△△市本町一丁目1番地

 

振出人 株式会社安全商会 代表取締役 山川太郎 

白地(しらじ)手形 … 「振出日」「受取人」「支払期日」「金額」は記載せずに振出すことができます。受取人の方で書き加えれば手形が完成します。

「支払期日」「金額」を空白のまま振出す … そんな怖いことをする人はまずいません。

振出日を空白にしておくと、支払サイト(振出日から支払期日までの日数)を第3者に分からなくすることができます。初めの受取人は分かりますが、裏書でクルクル回ると分からなくなって、資金繰りが苦しいことがバレない … 。

受取人が空白の手形を受取った人は、裏書せずに譲渡することができます。裏書による手形上の責任を負わずに済むので好都合です(裏書は次項で説明)。

割印と収入印紙の消印 

● 割印 

手形用紙が手形帳に収まっているときは、控え部分と繋がっています。ミシン目で繋がっているだけですから、手形を振り出すときに切り離します。このとき、手形用紙部分と控え部分に割印を押すことがあります。これは偽造を防ぐために行われ、それが慣例化したものですが、コピーをとっておく方がより安全です。

消印 

手形金額が10万円以上になると、金額に応じた収入印紙の貼付が必要です。手形の振出人が印紙を貼り、消印を押します(印鑑の他署名も可)。

印紙を貼らなっかたり、消印を押さないと印紙税法違反(罰則は本来の印紙額の3倍)になりますが、手形が無効になるわけではありません。これは、他の証書(領収証や契約書など)でも同じです。

手形の裏書・割引

受取った手形は支払期日にならないと決済できません。資金に余裕があれば期日まで保管しておけばよいのですが、これを第3者への支払いに充てたり、銀行等で換金したりすることができます。

手形の裏面には裏書欄が印刷されています。

表記金額を下記被裏書人又はその指図人へお支払ください

(目的)欄の記載例

● 裏書禁止 被裏書人に対してだけ手形の責任を負うという意味です。 

● 無担保裏書 裏書人が支払義務を負わないの意味ですが、これでは誰も受け取ってはくれないでしょう。

● 取立のため… 決済のために銀行に渡す場合。

 

平成  ○○年 1月 10

拒絶証書不要  

住所  ○○県△△市□□町10番地

     株式会社□□ 

     代表取締役 海野次郎  届出印なくてもよい 

(目的)

被裏書人   ABC株式会社  殿

 

 (4ケ所分、同じものが印刷されています。)

 

裏書は連続していなければなりません。表の受取人が第1裏書人になり、1番目の被裏書人が第2裏書人 … になっていきます。当然日付けも途中で逆転してはいけません。

支払期日には最終の手形所持人が換金(取立て)をします。不渡りになったときには、手形所持人は裏書人に対して手形金額及び諸費用・期日後の金利相当額を請求することができます。これは、裏書人の誰に対してもできます(複数も可)。

第3者への支払いに充てずに即換金したい場合は、銀行で割引いてもらいます。

銀行に対する裏書譲渡の形をとります。

銀行は手形金額から手数料と支払期日までの金利相当額を差し引きます。

銀行での割引には、手形取引約定書を交わしていることが必要で、担保となる定期預金や不動産等への抵当権設定も求めらます。

全ての手形を割り引いてくれるとは限りません。割引依頼者ごとに割引枠(信用枠)を設定しています。また、安全性の審査を経てから割引に応じますので、割引までに数日を要します。

銀行以外の手形割引業者 (貸金業者 ) に割引いてもらうこともできます。

手形割引業者の登録は 3年ごとに更新され、更新回数が登録番号の前に付けられます (初回は1 )。 登録番号が △△県知事(6)000000号 であれば、(6-1)×3 = 15年 以上続いている業者を意味します。

(参考)金融庁の 「 免許・許可・登録等を受けている業者一覧  (貸金業者)」 で、貸金業者の一覧をみることができます。

手形割引業者によりますが、一般的に

◆ 割引料は銀行より高く 、手形の銘柄 ( 振出人 ) によりマチマチです ( 4.0% ~ 20数%  )。

◆ 依頼人の信頼性は不問、担保不要で、即現金化でききます。

◆ 優良銘柄であれば割引枠はありません。

手形の決済

手形の振出人は何もしません。ただし、支払期日の当座残高が手形金額未満の場合は「不渡」を出すことになります。

手形の所持人は(自己の取引銀行で)

◆ 代金取立依頼書に手形の明細を記入し、銀行届出印を押します

◆ 手形の裏書欄には次のように記載します

住所

  ○○県△△市 ******

  □□商事株式会社

  代表取締役 田中 一郎 

(目的) 取立委任のため

   は銀行届出印を押します

 

 

 ○○銀行           殿

支払期日前であれば何時でも構いませんが、遅くても支払期日の2・3日前には渡します。

その他

■融通手形

融通手形という種類があるわけではなく、通常の手形と同じ姿・形です。

資金の提供を手形で受けるので融通手形といいますが、商取引のない手形ですから不渡になる可能性が高いのです。特に資金繰りの苦しい者同士が互いを受取人にして出し合う場合は、連鎖倒産に陥る危険性があります。

といっても手形の表に「融通手形」とは一切書かれていません。判別は難しいのですが、裏書手形を受取る際には、次の点に注意してください。

業種 … 振出人と受取人が全く違う業種では、取引の決済としては ?

取引の流れ … 売買の決済の場合、卸業者と小売業者では小売業者⇒卸業者へ回るはずです。これが逆の場合は?

■手形貸付

約束手形を銀行に振り出して融資を受ける方法を、手形貸付(通称=手がし)と言います。

貸 手 (銀行)

借 手 (事業者)

裏書可能

印紙税が貸借証書より安い

不渡りでも手形訴訟ができる

返済できないと不渡り処分を受ける

条件が明瞭 (ただし、一般には証書貸付より短期で高利率)

 

■ 電子手形

手形取引の減少と電子手形の登場

手形取引はピーク時の1990年には 約4,800兆円 ありましたが、2009年には 約430兆円 にまで減少しています ( 全国銀行協会:決済統計年報 )。

要因は色々と挙げられまていますが

● 印紙税の負担   ● 盗難・紛失、偽造のリスク   ● 物理的な手渡しが必要

等のコストを抑えるため、送金が多用されるようになりました。

手形には上記のようなデメリットもありますが、裏書や割引等によって早期に資金化できるメリットがあります。送金 (期日ギリギリの振込 )では、実際の取引から入金まで数ケ月必要になります。

紙の手形のデメリットを解消し、手形本来のメリットを生かすことができる … と期待されているのが電子手形です。電子記録債権法が2008年12月に施行され、実際の運用が2009年11月にスタートしています。

電子手形の仕組み

期日決済、裏書譲渡、割引等の手形の根幹となる機能は、紙面の記録が電子データになっても変わりません。紙が無くなるので、それに変わる記録と保管が必要になります。手形の振出人・受取人が個々に記録と保管をしていては、コストもリスクも増えるばかりです。

電子データの記録と保管は電子債権記録機関が行います。2010年3月現在では、「日本電子債権機構(民間)」の1社だけですが、2012年には全国銀行協会が記録機関を設置する予定です。実際の業務は(サービス取扱)金融機関が仲介します。

手形の振出と決済のイメージを図 にすると

電子手形の発生 (手形の振出 )

期   日   決   済

発生記録の申請

記録機関

(金融機関)

債権発生(予定)のお知らせ

(振出人)

 

振出人の取引金融機関

 

期日決済指示

記録機関

(金融機関)

期日到来のお知らせ

(受取人)

 

受取人の取引金融機関

債権発生(電子手形) ⇒ 

 ↑ 

(引落) ⇒ 口座間決済 ⇒ (送金)

割引と手形譲渡(裏書)は

電 子 手 形 割 引

手   形   譲   渡

(連絡)

記録機関

(金融機関)

割引申請

受取人

受取人の

口座へ入金

(連絡)

記録機関

(金融機関)

 (連絡)

譲渡申請

 2営業日後  ⇒    

 

受取人

⇒ ( 譲渡 )

のようになります。

全ての手形取引が記録機関に集約されて、一元管理されます。 赤の  →  はPC(パソコン)又はFAXでやり取りします。

電子手形では、次の新しい機能が利用できます。

● 定期割引

振出人(支払企業)と割引希望日 … 例えば毎月10日、を事前に登録しておきます(定期割引申請)。

債権発生(手形の受取)の都度割引申請する必要はなく、希望日には口座へ入金されます。

● 分割割引・分割譲渡

割引も譲渡も1円単位に分割することができます。ただし、1000円未満の額には分割できませんので、1000円が最低額です 。割引の際には必要な額だけ割引けば、割引料を抑えることができます。

蛇足 紙の手形では譲渡する際に裏書しましたが、電子手形では裏書できませんので単に「譲渡」といいます。

電子手形には、発生(振出)・譲渡・支払(決済に伴う債権の消滅)・分割等が記録されます。

電子手形のメリット

一般に次のようなメリットが考えられますが、まだ始まったばかりなので断定はできないかも知れません。

割引は無審査で行われるので、不動産・預金等の担保が不要になる。

分割割引で割引料を抑えることができる。

発行(振出)・保管等の事務コストの低減、盗難・紛失リスクの解消。

電子手形を導入するには

説明会への参加が必要です ( 一部説明書類で代替 )。 システムの概要が説明されます。

取引金融機関にお尋ねください

取引金融機関との間で契約書を締結し、利用者情報登録をします。

パソコン操作又はFAX送受信が必要です (どちらもダメの方は諦めてください )。

製作・著作 協進会  2003/12 (2010/07 改定補筆)

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