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均等償却額の端数処理


平成19年の大改正で残存価額が廃止されました。周知のことですが、均等償却の償却(限度)額で生じる端数処理に悩む経理担当者も居られるようなので、考えてみましょう。

均等償却の対象は、  一括償却資産 、旧残存価額の5年均等償却、 繰延資産 、リース資産等です。

1.一括償却資産

法人税法施行令の端数処理に関する規定はどこにもありませんが、第百三十三条の二に次の条文があります。

一括償却資産の損金算入

当該一括償却資産につき当該事業年度以後の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は、その内国法人が当該一括償却資産の全部又は一部につき損金経理をした金額(…… )のうち、当該一括償却資産に係る一括償却対象額を三十六で除しこれに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額(…… )に達するまでの金額とする。 

「…… 金額に達するまでの金額」とあるので、「端数は切捨て」が多数派となっています。「端数は切捨て」に従うと

一括償却資産の取得価額が 865,862円の場合、 865,862 ÷ 3 = 288,620.666… ⇒ 端数を切上げて288,621 にすると 「達するまでの金額」を超えてしまいます。 各期の償却(限度)額を 288,620円とすると、  288,620 × 3 = 865,860 ですから、2円の端数が残ります。この2円 は4年目に償却するのでしょうか? 一括償却資産は3年均等償却ですから、ナニカ 割り切れない感じがします。

法人税別表16(8)で確認してみましょう。「4」欄の金額は、記載の計算式通りだと 288,620円ですが、4年目では繰越した端数だけを償却するので 2円と記載すると計算式を無視することになります。別表16(8)は端数の繰越処理を想定していません。

事業の用に供した事業年度又は連結事業年度

1

 

前々々期

前々々期

前々期

前期

(当期分)

同上の事業年度又は連結事業年度において事業

の用に供した一括償却資産の取得価額の合計額

2

 

865,862

865,862 865,862

 

 

当期の月数(中間申告の場合は事業年度の月数)

3

 

12 12 12

 

 

当期分の損金算入限度額   (2)×(3)÷36

4

 

288,620

288,620

 

 

当  期  損  金  経  理  額

5

 

288,620

 

 

差引

損  金  算  入  不  足  額

6

 

288,618

 

 

 

損   金   算   入    限    度   超   過   額

7

 

 

 

 

 

 

限度超過額

前     期     か     ら    の    繰    越    額

8

 

 

 

 

 

 

同   上   の     う   ち   当  期   認  容  額

9

 

 

 

 

 

 

翌      期     へ      の      繰     越     額

10

 

 

 

 

 

 

行令第百三十三条の二の条文 「…… 一括償却対象額を三十六で除し」 は、別表16(8)の記載方法から判断すれば、3年で全額を償却し終える額を損金算入限度額とする …… と読むことができます(できそうです)。

また、「端数は切捨て」は 288,620.666…<288,621 を根拠にしていますが、288,620<288,620.666… で288,620 を超えているのだから、「端数は切上げ」 と判断しても妥当(許容範囲)でしょう。

2.規定がなければ「納税者有利」の原則

国税庁の e-tax 「平成26年分確定申告書等作成コーナー よくある質問 」 に 「作成コーナーでは、減価償却費の計算で小数点以下の端数が生じた場合、切上げ処理を行っています。」 と記されています。他方、法人税関連の手引き・パンフレット等に例示されている減価償却額は、いずれも端数切捨てのようです。端数を生じない場合の事例が多く、全部で幾つの例示があるのかも分かりませんので 「のようです」 と致します。

Web サイトで検索すると、法人の償却限度額の端数は「切り捨て」と断じる記載もあります。以下、引用しますと

法人の減価償却の規定は、償却限度額以内の金額で償却費として損金経理した金額を損金算入するというもので、償却限度額以内の金額になるように端数切り捨てになります。

例えば、償却限度額の計算額が 412,345.378 だとすると、412,345 は限度額以内、 412,346 では超過するとのご判断でしょうが、 0.378 をどう処理するかの規定はありません。

個人事業者(所得税法)では強制償却、法人(法人税)では任意償却の違いはありますが、償却(限度)額の端数処理が異なる根拠にはなりません。 e-tax の減価償却費の計算が端数切上げになっているのは、「納税者有利」の原則に即したものです。この原則は、法人にも当てはまりますので、償却限度額の端数処理は任意と解すべきで、均等償却については、端数切上げにすれば償却期間内に全額の償却が終了します。

〔補足〕 某サイトに「税務署に追い合わせたところ、端数処理は任意との返事 」 とありました。また、本HP管理者も端数切上げでの申告を続けていますが、今まで問題にされたことはありません。

3.一括償却資産以外の均等償却の償却(限度)額

 ◆ 旧残存価額の5年均等償却

(差引取得価額×5%−)× 当期の月数 ÷ 60  

 ◆ 繰延資産

支出した金額 × 当期の月数 ÷ 償却期間の月数 

 ◆ リース資産

償却計算基礎額 × 当期のリース期間の月数 ÷ リース期間の月数 

償却(限度)額の端数を切捨てにすると、償却期間の最終年度に端数の合計額が残ってしまい、1.の事例と同様に端数だけを償却期間終了の翌期に処理せざるを得ません。

4. 償却期間内に償却するには

もう結論は出ていますが、端数切上げにすれば期間内に償却が完了します。ただ、各期の償却(限度)額をどのように調整するか …… 拘る方のためにこれも考えてみましょう。「1.一括償却資産」の事例を再度取り上げます。

取得価額は 865,862円 です。

 

@ 各期の償却限度額の端数を切上げる

A 各期の償却限度額の端数を適宜調整する

取得年度

865,862 ÷ 3 ≒ 288,621

288,621 償却

過不足 = 0

865,862 ÷ 3 ≒  288,621(切上げ)

288,621 償却

過不足 = 0

翌年度

865,862 ÷ 3 ≒ 288,621

288,621 償却

過不足 = 0

865,862 ÷ 3 ≒  288,621(切上げ)

288,621 償却

過不足 = 0

翌々年度

865,862 ÷ 3 ≒ 288,621

288,620 償却

不足 = 1

865,862 ÷ 3 ≒  288,620(切下げ)

288,620 償却

過不足 = 0

@の処理方法で、税法上の償却不足額が出ても、それ以上の調整は不要で翌期へも繰越しません。それでも「過不足 = 0」 にしたい方はAの処理方法にしてください。事例では翌々年度に端数切下げとしていますが、どの年度で調整してもかまいません。

法人税別表16(8)で確認してみましょう。

事業の用に供した事業年度又は連結事業年度

1

 

 

A 前々期

@ 前々期

前期

(当期分)

同上の事業年度又は連結事業年度において事業の用に供した一括償却資産の取得価額の合計額

2

 

 

865,862 865,862

 

 

当期の月数(中間申告の場合は事業年度の月数)

3

 

 

12

12

 

 

当期分の損金算入限度額  (2)×(3)÷36

4

 

 

288,620

288,621

 

 

当  期  損  金  経  理  額

5

 

 

288,620

288,620

 

 

差引

損  金  算   入  不  足  額

6

 

 

 

 

 

損   金   算   入    限    度   超   過   額

7

 

 

 

 

 

 

限度超過額

前     期     か     ら    の    繰    越    額

8

 

 

 

 

 

 

同   上   の     う   ち   当  期   認  容  額

9

 

 

 

 

 

 

翌      期     へ      の      繰     越     額

10

 

 

 

 

 

 

 


著作:(有)協進会      2015 / 07


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